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NEWS 2022.09.27

「オメでたい頭でなにより3」勝手に全曲解説

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『オメでたい頭でなにより3』勝手に楽曲解説

文:奥“ボウイ”昌史


オリジナルアルバムとしては約25カ月ぶり。コロナ禍で満足にライブができなくなったことでアーティストとしての軸足を見失い、ライブができないフラストレーションで曲も書けない。自信もない。あげくにポリープ。そりゃ病むわ()。ライブさえできればサヴァイブできるという命綱すら、いとも簡単に断たれた音楽シーンで今、5人にいったい何ができるのか――? 曲ができない苦肉の策でもあった初のカバー集『オメでたカバー横丁 ~一番街~』で改めてつかんだ初期衝動の先に、『オメでたい頭でなにより3』が生まれた。なかったことにはできない敗北感を認めた上で、それでも鳴らしたかった音楽。そこに生きざまが出ないはずがない。3枚目にして、これがある意味1stアルバムかもしれない。



01:きなしゃんせ。

毎度、冒頭から爆発寸前のハイエナジーで迫りくるオープニングとは異なり、ラフなバンドサウンドを聴かせる1曲目は、これまでのアルバムとは明らかなモードの変化を感じさせる。それはmaoが初めて作曲に名を連ねたのに加え歌詞の世界観にも顕著で、赤飯の語り口調から始まる同曲は、今作のジャケットやアーティスト写真にも通じる、とある居酒屋の店主目線でつづられている。思えばバンド=一軒のお店みたいなもので、その店でしか味わえない売りは何なのか? どうしたら末永く常連がついてくれるのか? 景気や人気に翻弄されながら、周りのお店がつぶれては生まれる中で、今日もまたお客さんと一夜を共有するささやかな幸福。コロナ禍の時代の流れを終始柔らかな雰囲気のまま楽曲に落とし込みながら、確固たる決意の一行が導く粋な結末まで、アルバムの最高のお通し/突き出しとなる逸品に仕上がっている。



02:あれこれそれどれ

かつてボカロPYMと赤飯がフィーチャリングした楽曲を、オメでたとして8年の時を超えセルフカバー。イントロの赤飯のセリフも2022Ver.に変更され、耳に残る祭ばやしリフから突入する高速BPMのアッパーチューンを、高い演奏力を駆使して人力で再構築。よりヘヴィにエッジィにと、破壊力マシマシの狂暴な一曲となっている。過去曲でありながら図らずしも前曲「きなしゃんせ。」にも通じる精神性を感じる楽曲で、刹那の人気ではなく長く音楽を続けられる耐性を、どこかで聴いたような見せかけのモノマネではなく、理屈抜きの本気とオリジナルを追い求める覚悟と理想を、今一度現代に鳴らしてみせた意味深い選曲だ。



03:超クソデカマックスビッグ主語

Slipknotをほうふつとさせるゴリゴリラウドな極悪マッチョソング風情といい、SNS社会を斬りまくるシニカルな歌詞といい324の真骨頂で、天国と地獄を行き来するがごとくキャッチーなサビの解放感とのカタルシスがエグい。3年前にはあったというデモを形にし、曲間のラジオボイス、声にならない“(個人の感想です)”というフレーズ、とにかく大きいことを乱暴に伝えたい曲名と、全てを無効化する最後の一行の投げっぱなしブレーンバスター感に至るまで、徹底的に遊んだオメでたのひな型と言えるリード曲。ジャニーズの4人組男性アイドルグループ、ふぉ~ゆ~の辰巳雄大が初主演するTVドラマ『信長未満 -転生光秀が倒せない-』のオープニング主題歌に決定したとの報を聞き、“そのドラマ、懐が深過ぎるやろ”と一気に興味津々。バンド史上初のドラマ主題歌がこれというのも、何だかオメでたらしい。

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04:ダンシングオールナイトレディ

汗かぶれ治療薬のアセムヒEXをイメージしたWEBアニメプロジェクト『怪盗ヌルパン』のオープニングテーマとして書き下ろした「完全無比Lady」を、装いも新たにリメイク。踊って騒げるサマーチューンが誕生した。夏と言えばの偉大なるパイセンORANGE RANGEのポップなフレーバーもにおわせながら、ひたすらおバカなラップをバカには書けない巧みなフレージングで紡ぎ上げ、メロディと並走するワウなギターも楽曲のテンションキープに抜群に機能。ハードロック然とした赤飯のひときわワイルドなボーカルも聴きどころで、ライブでの盛り上がりが想像できる先行配信曲だ。ちなみに、もんた&ブラザーズの昭和の大ヒット曲「ダンシング・オールナイト」(1980)をもじっているのか、たまたまか……ってこれを読んでるファンはどれだけの人が分かるんだ?()

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05NO MUSIC NO LIFE

ノイジーなピッキングハーモニクスと同期のデジタル音で冒頭から心を高ぶらせる、圧倒的轟音によるエクスタシー。6人目のメンバーとも言われる中西航介が作曲に参加し、コロナ禍による怒りやいらだちを隠すことなくブチ込んだ最重量級アンセムがこれだ。ぽにきんぐだむによるキレキレのリリックは痛快と感動が入り混じる最高純度の切れ味で、幾度となく奮い立たされるパンチラインに鳥肌が止まらない。「NO MUSIC NO LIFE」というまっすぐなネーミングにすでに大いなる意志が刻まれているが、今作における大きな特徴であるメッセージ性が、歌詞の全編にとりわけ表れている一曲だ。怒りは芸術を生む一つのエネルギーであり、「音楽に政治を持ち込むな」とのんきに構えている間に、自分の“好き”は次々と死んでいく。この2年、最も虐げられたアートでありエンターテインメントの、燃えたぎる反撃の狼煙がここに。

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06:プレシューズ

NO MUSIC NO LIFE」から一転、入りのサビから切なさと爽快感が漂うストレートなJ-POP。なのに、Aメロは赤飯のこぶしが効いたどこか演歌テイストなのはなぜ?() 324の手ほどきの元、4年ほど前からあったデモにmaoが初めて歌詞を書いた今曲は父への手紙とも言うべき内容で、彼の人柄が行間からも伝わってくる。極めてオーソドックスな一曲でありながらきっちりポップスの水準をクリアするクオリティで、その役割を担っているのがツボを押さえたギターサウンドだと言えるだろう。案外こういう曲がCMなんかに使われたら、知名度を広げるきっかけになったりして。題名はフランス語で“大切な”という意味。脈絡もなくいきなりフランス語なのも、どこかJ-POPっぽい()



07:推しごとメモリアル

メンバー随一のアイドルヲタを自称するぽにきんぐだむのペンにより、アイドルとそれを推すファンの心理を、首がもげるほどうなずける“あるある”を散りばめ歌った、今やライブには欠かせない鉄板曲であり異色の一曲。ライブではメンバー全員がサビで楽器を置き、演奏そっちのけでダンスする(冷静に考えたら何ちゅうバンドだ)。メジャーデビューシングル「鯛獲る」(2018)のカップリングだった人気曲が、ここにきて満を持してアルバムに初収録された。先日、歌詞のモチーフとなったアイドルが、バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの望月みゆ(みゆちぃ)であることが、ぽにきんぐだむのSNSにより発覚した。

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08:推しどこメモリアル ~ALBUM Ver.

前曲「推しごとメモリアル」のメロディを踏襲した、透明感のあるシンセがいざなうドラマチックな展開に心地よく身を委ねていたら、やっぱり来るのねデスボイス()。オメでたの芸風を秒で味わわせたかと思えば、昭和に一時代を築いた某男性アイドルをあからさまに意識した曲調へ……。そう、この曲は日本ローラーダンス協会公認ソング。推しメモシリーズ第2弾として2021年に配信リリースされ、まるで歌唱力を放棄したようなメンバー総出のボーカルから、今作では赤飯が一人で歌い直したバージョンへとリアレンジ。『ヤヌスの鏡』的大映テレビ感を漂わせるコーラスも忍ばせるなど、相変わらずフザけているかと思いきや最後には力強く訴えかける、音と言葉のツンデレもお見事だ。

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09:意味ない歌

アルバムのラスト3曲は、外部のサウンドプロデュース&アレンジャーに迎えて制作され、まずは乃木坂46の名曲「シンクロニシティ」の作曲・編曲でも知られる、シライシ紗トリと初タッグ。軽快なメロディにはゴージャスで華やかなホーン&コーラスアレンジが施され、赤飯の歌声をストレートに活かすことにフォーカスした、まじりっけなしのJ-POPでありラブソングが完成。だが、そのボーカルRECは困難を極め、何と300テイク超えという事態に……! 日々に潜む光に目を落とし、一見、投げやりに見える“意味なんてないよ”というラインが、歌詞を追うごとにポジティブに響く構成力も含めて、オメでたと匠が手を取り合うとこうなるという好例を示した、意義あるトライアルとなった。



10HAKUNA MATATA

HAKUNA MATATA(ハクナ・マタタ)は、あのディズニー映画『ライオン・キング』の劇中でも触れられる言葉であり、スワヒリ語で“何とかなるさ、気楽にいこう、心配ないさ”という意味。「NO MUSIC NO LIFE」同様、中西航介・ぽにきんぐだむコンビが作曲を担当し、赤飯と共にコロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のメンバーとしても活動する世界的DJKSUKEとコライト。アンビエントでオリエンタルなサウンドデザインで、ワールドワイドな新境地を獲得している。徹底的にクールでアグレッシブ、いい意味で今作において最もオメでたらしくない(!?)、新たな可能性に満ちた一曲だ。



11:すばらしい時代

ラストを飾るのは、カバーアルバム『オメでたカバー横丁 ~一番街~』に続き、ONE OK ROCKMAN WITH A MISSIONLiSAらを手掛けるakkinを共作に迎えたマッシブなナンバー。コロナ禍に誰より打ちのめされたオメでたが、あえて「すばらしい時代」と声を枯らして歌い上げる、悲喜こもごもの叫びにはグッとくる。昔に比べりゃそこそこモノには満たされた時代かもしれないが、果たして心はどうだろう? 答えのないままに終わっていく楽曲だからこそリアルで、オメでたの弱さや迷い、優しさやタフさも肌で感じて、これからも共に歩いていきたくなるアルバムになったのではないだろうか。



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