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NEWS 2022.10.01

「オメでたい頭でなにより3」オフィシャルインタビュー前半

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――カバーアルバム『オメでたカバー横丁〜一番街〜』のインタビューの時もおっしゃっていましたが、コロナ以降、どういう曲を作ったらいいのかわからなくなっていた時期がありましたよね?

赤飯:おっしゃる通りです。その感じが完全に解消されて今回のアルバムの制作が始まったのかといえば、そうでもなく。むしろそれが悪化していきました。

324:順を追って説明すると「ライブ活動が思うようにいかなくなった→今まではライブに向けて曲作りをしていたけど、それができなくなった→曲作りが行き詰まるようになった」という流れですね。そういう中で「カバーアルバムを作れば?」ってなったのが前作で、手探りしながらいろいろやってみたり、外の人の手を借りて新しいサウンドをやってみて手応えがあったんですけど……。

赤飯:その流れを経て、自分の作りたいものに対するメンバーからの共感を得られたと思っていたんですけど、「別にそうじゃなかったなあ」って。

324:あっ、そう?

赤飯:うん(笑)。そこで落ち込みつつ、「じゃあどうしよう?」と。打開策を見つけられなくて、ただ悶々として悩むだけの日々でした。その結果、メンバー各々のメンタルがやられて、限界を迎えた僕が「1回手放します」と。僕が全てのフィルターになって自分の中にある理想形を具現化するのが自分にとっての命題、チームにとっての命題だと思っていたんです。でも、僕自身が限界にきてしまって。だから一旦手放して任すことにして、「この曲は彼にやってもらって、これは彼にやってもらう」ってなりました。そこから初めてなんとか動き出して出来上がったのが、この3rdアルバムです。

324:カバーアルバムを出した時、「このサウンドかも」っていう手応えはあったんです。だから「赤飯のやりたいサウンド、表現したい音や空気感を形にしたいよね?」っていうのがあったんですけど、赤飯はサウンドクリエイターではないから「具体的にどうしたらこういう音が出るのか?」っていうのがなくて、仕上がってきたものに対して「こうじゃないなあ」って言うことしかできなかったんですよ。それなのに俺らは任せようとしちゃったから、赤飯も「上手く作れない」「作らなきゃいけない」っていうマインドになって負担をかけてしまったんだと思います。それと同時に、頑張って仕上げたものに対して「違うんだけど」って言われるのも、俺らとしてもあんまりいい気持ちはしなくて。

赤飯:そりゃそうや。

324:うん。だから不健全だったよね?

赤飯:そうだった。

324:赤飯に任せるにしてももっと寄り添うべきだったし、赤飯もわからないんだったらもっと早めに手放した方が良かったのかもしれない。もちろんそれで掘っていって良くなった曲もあったけど、具体的なものがないまま進めていたのが良くなかったのかなと思う。

赤飯:ヒントのパーツみたいなのはすごく集められるんですけど、それを具体的に形にしていくのが難しかったんですよね。

324:そうだね。

赤飯:パーツの共有は、この2年くらいの間、みんなでしていたんですけどね。でも、自分の伝え方の拙さもあったので、手放してみんなに任せるようになりました。

324:それによって変に高かったハードルを下げられた部分もあったのかなと思います。

赤飯:「とりあえず進んでみようか?」になったからね。

324:「すばらしい時代」の進め方は、特にそういうところがあったなあって。時間はかかったけど、「大丈夫だよ。良くなるよ」ってなったから。

赤飯:たしかに。

324:重く考えて「どうしよう?」ってなっても、傍から見たら「これめっちゃいいから大丈夫。そのまま進めよう」って思うことが度々あったんだよ。その結果、良い出来になったのが「すばらしい時代」。最初のハードルを上げ過ぎないで進めて、ナチュラルに良いものになったからね。やっぱり、「どうにかして最強の1曲を生み出さないと!」ってなっていたから行き詰まったんだと思う。

赤飯:つまり、超強烈なリミッターをかけていた?

324:そうそう。それはあんまり良いことではない。とりあえず作ってみて出来上がったものを評価するべきだということに気づきました。

赤飯:そういうのがここ34ヶ月くらい?

324:半年くらいかも(笑)。赤飯の中で「こういうサウンドをやりたい」っていうのがありつつも、そういうことに関する専門家ではない人に「サウンドは任せるね」っていうのは任せ過ぎたんだと思う。

赤飯:今回のアルバムはakkinさん、シライシ紗トリさんにアレンジをやっていただいているんですけど、シライシさんとお話をした時、「曲の根幹にあるのはメロディと歌詞だから、まずそこを作ることからスタートしてみたら?」っておっしゃって頂いたんですよね。「たしかにそうだよなあ」って思って、弾き語りで歌詞とメロディを作ってみて形になったのが「すばらしい時代」でした。

――頭の中で鳴っているサウンドがあっても、具現化するためには専門的な知識、手法の理解がないと難しいですからね。サウンド面はひとまず置いておいて、まずはメロディと歌詞を作るところから始めた方が、いろいろ具体的に広がるものがありそうです。

324:そうなんです。赤飯は頑張ってトラックメイクとかをやろうとして、打ち込みに挑戦していたんですけど。

赤飯:でも、仕上げられるほどのものにならなくて。自分で聴いても「この部分は良いけど、で?」ってなっていました。その「で?」があると、「これどう?」って出せないんですよ。

324:歌詞とメロが先にあって、「こういう感じで」って伝えてもらったら、俺らは作っていくことができるんだけどね。土台がしっかりしていれば、良いものにしていくことができるんです。

赤飯:「シンプルな弾き語りで曲は全然できるんだな」っていうのがわかりました。

――そうやって生まれた曲は、今までもありましたよね? 例えば「オメでたい頭でなにより」も、赤飯さんの弾き語りから形になっていった曲ですし。

324:そうなんです。初期に上手くいっていたことを改めてakkinさんやシライシさんの手もお借りしながらやってみたのが今回のアルバムですね。

赤飯:メロディと歌詞はすげえ思い浮かぶんですけど、それが自分の中で「良い!」って思えないっていうのもあって。最終的に「で?」って思っちゃうんです(笑)。それが良くなかったんでしょうね。もっと自信を持ってやれるようにしたいなあって思っています。でも、「音で空間を作りたい」っていうのは、ずっとあるんですけど。

324:自分がやらなきゃいけないこと、恐れていることに対して降伏するのは、すごく勇気が要るんです。「できなかった」って言うのはなかなかできなくて、そこから逃げる人も多いから。「俺は最初から挑戦してなかった負けじゃない」って言うのはメンタルを守るための本能的な行動だけど、「やってみてできなかったから降伏します」っていうの偉大な一歩なんですよね。

――ヘヴィなお話になっていますが、過去最大のバンド解散の危機だったということですかね?

324:それは本当にそうだと思います(笑)。

赤飯:今までぶつかることなかったからね?

324:うん。腹を割って話すのはすごく良いこと。

赤飯:民主的なバンドで、今まで穏やかにやってきたんですけど、それは良い部分もありつつ悪い部分もあったっていうことですね。そういう意味で人間らしいことが今回の制作の中でできたんだと思います。

――完成したアルバムの全体像に関しては、何か感じていることはありますか?

赤飯:今回のアルバムに至るまでのいろんな出来事もあったので、「敗北感」っていうのがすごく強いんです。レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『カリフォルニケイション』を聴いた時に漂ってくるあれですね。レッチリを久しぶりに聴いていて、『カリフォルニケイション』が今の自分にあまりにもジャストフィットしました。特に自分が深く絡んでいる曲に関しては、そんな気分を纏っているのかもしれない。でも、そういうのがあまりにも表れ過ぎても卑屈な雰囲気になりそうだったので、「ちょっと待て!」とメンバーに止めてもらったんですよね(笑)。それで完成したのが、例えば1曲目の「きなしゃんせ。」。ぽにきの提案で《へいへい らっしゃい きなしゃんせ》をサビに持ってきて、良い感じのポジティブさが生まれました。哀愁も失っていなくて、納得できるものになりました。

――324さんは、今作の全体像に関してどのようなことを感じていますか?

324:メンバーそれぞれがいろいろ曲作りに関わるようになったし、「この曲はこれが主題で、彼がイニシアチブをとる」っていうのがあったので、個々の曲ならではのものが出ていると思います。

――サウンド面に関しては、やはり外部のアレンジャーさんに入っていただくようになったのが大きいですよね。

324:はい。アレンジによって色がしっかり出るんですよね。「俺がやったらこうはならなけど、良いなあ!」っていうのがいろいろあって、すごく勉強になりました。

 

 

きなしゃんせ。

――では、各曲についての詳しいお話を始めましょう。先ほども少し語っていただきましたが、1曲目は「きなしゃんせ。」ですね。レッチリの話が出ましたけど、僕の中でこれはその要素プラス「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」なんです。

赤飯:ラスサビまえの324のギターソロの感じから、そう思ったんですか?

――それもありますけど、セリフっぽい歌の感じに「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」的なものを感じたんですよ。

赤飯:そっちか! なるほど。ブレイクからの言葉の間とか、もしかしたら無意識の内にそこから生まれたものがあったのかもしれない。

――作曲はmaoさんと赤飯さんの共同クレジットですね。

赤飯:はい。もともとウチらがマネスキンにハマっていて、そこからのインスピレーショがあったんです。maoがリズムパターンを打ち込んでベースを弾いて、それを324に「自由にやってみて」って渡したら、マネスキンっていうよりもレッチリっぽいフレーズが返ってきて、「これはこれでめっちゃ良いね!」ってなったんです。

――マネスキンは、この前サマソニにも出たイタリアのバンドですね。

赤飯:はい。最初、「イタリア語っぽい音感を探して日本語を嵌めてみたらいいかもね?」ってやってみたんですけど「何かちゃうな?」ってなって、開き直ってセリフっぽくやってみることにしたんです。デモではもっとナチュラルに喋っていたんですけど、本チャンのレコーディングをする時に気持ちが入ってしもうて、「これはこれで、らしいのかな?」っていうものになりました。

324:言われてみれば、たしかに「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」に構成が似ているのかもね?

赤飯:うん。

324:セリフを喋って、ブレイクを挟んでサビっていう構成は、通ずるものがあるのかも。

――周りのお店がどんどん閉店する中、営業を続けている居酒屋の親父のセリフが綴られていますが、この雰囲気はコロナ以降の音楽業界とリンクするものがあります。

赤飯:そうですね。それと自分が好きな横丁的なものを表現したいと思っていました。

324:赤飯がかなり曝け出している感じがあるよね?

赤飯:臓物出てる?

324:うん。「はい! 俺のモツの煮込み!」って。この曲、「お通しソング」って言っているんですけど。

赤飯:この居酒屋のお通し? 「命削ってんね、大将!」って(笑)。セリフの部分は毎回のライブでその時に感じたことや、目の前のお客さんを見て出てきたことを言えたらいいなあって思っています。

324:こういう空気感って、「今やらずして、いつやるの?」っていうのがある。「今こういうことを表現しないと!」っていうのが、すごく出ている曲ですね。

赤飯:「ウチらも人間だぞ感」だよね。この曲、なんだかんだで最後にプラスになっていると思う。「1曲目のウェルカムの曲だからシャッターを下ろしてちゃ駄目。開こう!」っていうのがあったので、こういう歌詞になったんだと思います。

――この居酒屋の親父も大変そうだけど、来てくれるお客さんがいることが心の支えになっているじゃないですか。それって、バンドをやっていて感じることと同じですよね?

赤飯:そうですね。ライブに足繁く通ってくれている人たちへのラブソングでもあるのかも。

 

 

あれこれそれどれ

――今年4月の『オメコンベストテン とちょっと 2022』で2位でしたけど、この曲はオメでた結成より前の時期に赤飯さんがニコ動に投稿したのが最初でしたっけ?

赤飯:はい。2013年にYMと一緒にやったんです。YMが「赤飯さん歌って」って言って作ってくれて、オメでたを組む前の赤飯バンドで作った『Free Mosh License』っていうアルバムにも入れました。アグレッシブでありつつ軽快に怒りを表現している曲なので、すごく今のウチらに合っているって思ったんですよね。ライブでも盛り上がって楽しいですし、「今のウチらのムードで再構築したいよね?」っていうところで、今回のアルバムのために進めていきました。今回は打ち込みが全く入っていなくて、生楽器だけで表現することに重きを置いています。より生々しい感情を吐き出したくなってきていて、打ち込みがない方がそういうことを表現できると思ったので。

――最初にこの曲を歌った時は、どのような感情を込めていました?

赤飯:もともと「ヘイトを吐き出すタイプのシンガー」として自分を定義していたから、ナチュラルにそれをやっていました。でも、時を経て、ただの怒りだけではない部分もたくさん出てきていると思います。人間やし、いつだってハッピーというわけではないから、こういうヘイトの部分もしっかり出して、その上でハッピーにしていきたいんですよ。その姿勢の輪郭が、こういう曲によってより浮かび上がってくるのかなと。

――サウンドの音圧が、すごく気持ちいいです。

324:ミックスに関しても、ライブのサウンドの方向にしたいっていうイメージがあったんです。楽器の数が少ないのでバランスをとる難しさがあったと思うんですけど、敢えて勢いのあるものに振り切っていますね。このアレンジは、スタジオで「ああでもない、こうでもない」って言いながら組み立てていった感じかな?

赤飯:そうだね。

324:メンバーのやりたいことを引き出すために俺も敢えていろいろ言わず、質問を貰った時だけ「こうしたらどう?」って言って組み立てていった感じです。

赤飯:オチサビのアコースティックと歌だけになるところが大好き。

324:録る時に、何か注文があったよね?

赤飯:自分の感情のグッ!とくる部分とギターのストロークを合わせたかったんです。そこが合わさることによって圧が倍増すると思ったので。そういうことを伝えつつレコーディングしました。

 

 

超クソデカマックスビッグ主語

――324さんが中心となって作った曲ですね。

324:はい。2018年とか、結構前からあったデモを完成させた感じです。やっぱり俺はラウドが好きなので、そういう要素をしっかりアルバムに入れたいというのもありました。ゴリゴリにしつつもサビはキャッチーだったり、明るさも意識しています。

――《主語》を連呼していますけど、音の響きが気持ちいいですね。

赤飯:イントロで《主語》って叫ぶのが超気持ちいいんですよ。

――歌詞はSNSに対して感じる違和感を描いていますよね?

324:そうですね。これを作った当時に思ったのは、「なんでこの人たちはこんなに見ず知らずの人のツイートをありがたがっているんだろう?」っていうことで。言っていることに対して「なるほど」っていうのはたしかにあるけど、「なるほど」程度に留めるのではなくてそれに依存して生きていくのは良くないんじゃないかなと。自分の人生は自分でしか背負えないのに他の人に依存して生きていくのは、知性のある生き物として失格(笑)。ちゃんと情報を自分の頭で整理して、「これが自分だ」っていうアイデンティティを確立しないと生きている意味なんてないから。

――何らかの意見をみんなの総意=ビッグ主語にする違和感って、ありますよね。

324:そう。自分の言葉なのに「男は」「女は」「人間は」とかいうことにするのはおかしい。「私はこう思います」でしかないのに、でかい主語で喋っちゃうことってあるんですよね。

――「世間が怒ってます」とか、よく聞きますよね。

324:はい。怒っているのはその人なのに。「お前は別に当事者じゃないだろ?」っていうのもありますし。

――シタールの音色がサイケな雰囲気を醸し出しているのも印象的です。

324:そういうサウンドメイクは、完全に趣味ですね。シタールの他に向こうの楽器をもう1つ配置すると、なんか独特な酩酊感みたいなのが生まれたりして。何ていう楽器だったかな? テンプラみたいな名前なんですけど(笑)。そういうのが好きなんです。

――この曲、「Aメロの情報量が多くて大変」って言っていましたよね?

赤飯:はい。でも、もう歌詞を覚えられました。受験生のような気持ちで覚えたんです。単語帳をめくるがごとく(笑)。

324:俺の語彙、言葉で書いているから、やっぱ覚えるのが大変なんだろうね。馴染みがない言葉だったりするだろうから。

赤飯:それよりも、言葉の口当たりの問題だと思う。

324:なるほど。

赤飯:内容もめちゃめちゃ理解できるし、「かっこええなあ」って思いつつ、難易度は高い。

――《未だに勃たないダリ》が好きなフレーズらしいですね。

赤飯:はい。そこ、大好きです。《落ちてく夢見るバンビ》も好き。バンビって死にがちなイメージがあります。

――どういうことですか?

赤飯:大学時代にNancy Killed The Bambiっていう後輩のバンドがあって……ってどうでもいい話ですけど(笑)。

324:そこでもバンビが死んでた?

赤飯:そう。

――アメリカ人の留学生と一緒にやっていたシステム・オブ・ア・ダウンのコピーバンド・Remember Pearl Harborも活動していたサークルの後輩バンド?

赤飯:はい(笑)。

――(笑)。この曲、久しぶりに息を吸い込むスクリームで歌っているんですね。

赤飯:そうです。久しぶりにやりました。

324:エグさのあるボーカルが好きだから、やってくれて嬉しかった。

赤飯:シャウトもしているし、アグレッシブな何かをさらにやりたかったんです。この曲、ライブ映えすると思います。

324:《主語》を早くお客さんにも言って欲しいよね?

赤飯:うん。

324:お客さんを1人選んで言ってもらうとか?

赤飯:それも面白い。そういうのやりたいなあ。昔だったらそういう遊びもできたんやけど。そういうところから始まったバンドなのに。

――「三百六十五歩のマーチ」は、お客さんにその場で足踏み行進をしてもらっていますよね。今の状況下で最大限に遊べているじゃないですか。

324:あの曲も本当はもっとやりたいんですけど。

赤飯:ほんまはもっと練り歩きたい。隊列を成してやりたいんですよ。オーディエンスと、もっと遊びたいです。

――この曲に関して、何かさらに付け加えておきたいことはありますか?

324:歌詞は、逆説としてでかいことを言っています。《人生は短いなぁ》《人類はうるさいなぁ》って。

――その後に(個人の感想です)って入れているのがポイントですよね?

324:はい。「こんなこと歌ってるけど、真に受けたらお前も同じ穴の貉だからな」っていうこと。「全部冗談ですよ」っていうことで終わらせている歌ですからね。本当に「意味ない歌」は、実はこれなんです。

赤飯:なるほどね。

324:「こんな歌聴いてんじゃねえ!」ってことだから(笑)。

 

 

ダンシングオールナイトレディ

――Webアニメプロジェクト『怪盗ヌルパン』のOPテーマとして書き下ろした「完全無比Lady」のリメイクですよね?

赤飯:そうです。1コーラスあったものから歌詞を変えて、さらに広げたっていう感じです。この曲はリフがすごく良くて、「これで1曲作れるやん?」ってところからこうなっていきました。

――結果的にサマーチューンにもなりましたね。

赤飯:そうなんです。「完全無比Lady」を作った時は、サマーチューンとか考えていなかったけど。それよりも怪盗の怪しい雰囲気のイメージがありました。サマーチューンになったのは歌詞の影響ですね。キメの歌詞のフレーズにずっと悩んでいて、わかりやすい《ダンシングオールナイトレディ》になって、そこからどんどん夏感が増していきました。あと、裏テーマはエアロスミスの「Dude (Looks Like a Lady)」。

――歌はスティーヴン・タイラーの感じがありますからね。

赤飯:はい。

――エアロスミスと『おぼっちゃまくん』がミックスされているってことですね。《さいならっきょ》も入っていますから。

赤飯:それは思いつき(笑)。『おぼっちゃまくん』が好きなので。

――先日の6周年ライブでも盛り上がっていましたね。振り付けも楽しい感じになっていましたし。

324:そうですね。この曲はギター推しでもあります。やらなきゃいけないことを全部ギターでやっている感じなので。ビブラートの揺らし方だったりで上手いこと表現できたかなと思っています。ギター推しでやる感じは俺の中にもともとなかったんですけど、「ギター推しにします」っていうことになって、「おおっ! 頑張ろう!」って思いました。

赤飯:「この曲は324にギターヒーローになってもらわんと」って。ギターソロで鳥肌が立ちましたよ。

324:アウトロ?

赤飯:うん。「これこれ!」って。リフの感じも大好きです。

324:言われたことに対して自分なりに提示した答えがこれだったんです。

――執拗に真意を訊くことはしませんが……《先っちょ ピンってなった つい》とか、結構エッチなニュアンスも盛り込んでいる曲ですよね?

赤飯:はい。エッチですよ。

324:歌詞を書いている人がエッチなんでね。

赤飯:2番からの流れはmaoの提案を盛り込んでいます。もともとはヘヴィな感じのものだったんですけど、「それじゃあ飽きちゃう」っていうことで、肩の力を抜いた方向に舵を切りました。maoの提案のおかげです。

 

 

NO MUSIC NO LIFE

――作詞はぽにきんぐだむさん。作曲は中西航介さん、ぽにきんぐだむさんですね。

赤飯:はい。ぽにきの気持ちを代弁するように語りましょう。

324:この曲もそうですけど、「今、この曲を作らないとやってらんない!」っていうのがあるんですよね。

赤飯:これは去年の8月のワンマンのタイミングで発表したんです。当時のぽにきのモヤモヤが凝縮されている曲ですね。

――まさにコロナが生んだ曲ですね。ライブハウスに対して制約がいろいろ課されて、様々な理不尽や矛盾を感じながら溜め込んだ想いが伝わってきます。

赤飯:歌詞の表現でいろいろ特定できるから、こっちとしては冷や冷やですけど。

――《緑のタヌキ》は、カップ蕎麦のことを指しているんですよね?

赤飯:そうなんです。

――《言い渡された不要不急 隅に閉じ込められた四六時中》って、エンタメ業界の人間は特にいろいろ思うところがあるはずです。我々は世の中に不要な人間として認定されましたから。

赤飯:たしかに。きつかったですね。

324:音楽が死にかけていたからできたというか、やらなきゃいけなかった曲っていう感じがあります。

――《生活の維持に必要かどうかテメェの物差しで測るんじゃねぇ》とか、ぽにきんぐだむさんが抱いた感情がダイレクトに表れていますね。

赤飯:そうなんです。彼は超ストレートです。

324:ぽにきの言葉ではありつつも、いろんな人が思ってたことなのかも。

赤飯:ぽにきはウチらの代わりに怒ってくれているんで。

――こういう2MCスタイルの曲は、気持ちいいです。

赤飯:そうなんですよね。この前の6周年ライブ以降、「もっとぽにきを自由に動かしたい」っていうのは、みんなの一致した意見になっています。ギターボーカルだとどうしてもマイクに縛られてしまうところがあるから、「ぽにきはもっと咲き誇れるのになあ」っていうのがどうしてもあって。6周年ライブの時、ぽにきは手のケガでギターを弾かなかった分、自由に動き回っていて、テンションが上がりました。「もっと動いて欲しい! 動かしたい!」ってなったので、最近そういう話をしています。まさに怪我の功名。

――2人で動き回ってお客さんを巻き込んでいく姿が、すごく印象に残っています。

赤飯:映像でも何回か観たんですけど、なんかわかりやすいものを感じました。あと、「歌に集中できる」っていうのもありましたね。「海老振り屋」も、2人で歌っている画がすごく良かったですし。

――「NO MUSIC NO LIFE」も、2MCスタイルが映える曲です。こういうタイプをさらに開拓するのも楽しいのかも。

赤飯:うん。ありだと思います。

324:「NO MUSIC NO LIFE」は、ミクスチャーサウンドがかっこいい。中西くんとのタッグですけど、誰かが作ったサウンドにさらに手を加えてアレンジするのが楽しかったです。「あっ、こうなってるんだ?」っていう発見があるし、良い相乗効果が生まれた曲ですね。

 

 

■プレシューズ

――作詞がmaoさん、324さん。作曲が324さんですね。

324:はい。maoが作詞をするのは、これが初めてです。maoの日記みたいになっています。お父さんがあまり調子が良くないという電話を受けて、残された時間というものがあると自覚した瞬間、それをちゃんと言葉にして曲にしたいと彼は思ったんです。この曲のデモ自体は結構昔からあって、なかなか形にならなかったんですよね。浮いているデモの中で「これで書きたい」ってチョイスしたのがこれでした。

――「ラ・プレシューズ」は、フランス語で「大切なもの」という意味らしいですね。

赤飯:そうなんです。あと、幼い頃に初めて履かせてもらう靴の「プレシューズ」が掛かっています。

324:この曲はメンバー全員が前のめりになってくれました。

赤飯:maoのお父さんがライブに観にきてくださる時にやりたいですね。

324:そのための曲ですからね。

――オメでたの温かい面が、すごく出ている曲です。最近の曲は、必ずしもラウドではなくなってきていますよね?

324:そうですね。「ラウドは消そう」って言っています。ラウドという言葉から想像するサウンドじゃないから。

赤飯:「ラウドバンド」じゃなくて「ラウドに憧れているバンド」なんですよね。

――前までは「日本一オメでたい人情ラウドロックバンド」って言っていましたけど。

赤飯:でも、そう言えるほどラウドやっていないし。

324:「俺ら、それほどゴリゴリじゃないから、ラウドバンドって言わない方がいいんだよ」と。

赤飯:つまり、「ワナビーラウドロックバンド」です(笑)。曲によってはラウドなものもあるのはたしかだけど。

324:でも、ラウド一辺倒で終わる曲は、ほとんどないから。

赤飯:なんなら「ロックバンド」すら怪しい(笑)。「ポップバンドじゃないか?」っていう話も出てきています。今、自分たちの再定義に奔走しているところです。

――「プレシューズ」の作詞をmaoさんが手掛けましたし、今後、メンバーそれぞれの作風が発揮されることによって曲の幅がさらに広がっていくかもしれないですね。

赤飯:そうですね。

324:今回のアルバムも、いろんな面を出せていると思います。

 

 

■推しごとメモリアル

――「推しごとメモリアル」と「推しどこメモリアル」が両方とも収録されているんですね。「推しごとメモリアル」はメジャーデビューシングル『鯛獲る』のカップリングでしたから、アルバムに収録されるのは初?

赤飯:はい。

324:でも、なぜかフィーチャーされる機会の多い曲です。

赤飯:ライブでずっとやっているからね。ワンマンでは100%やるし、それ以外でもこれを外すのは何かしらの意図がある時しかない。だから「なんでアルバムに入ってないねん?」ってなって、満を持して入れることになりました。

324:「推しどこメモリアル」もあるし、「じゃあ、このアルバムで並べちゃおう」と。

赤飯:『鯛獲る』の時の「推しごとメモリアル」は生ドラムじゃなかったので、今回は改めてミトに叩いてもらって、ギターもところどころで今のプレイに近いもので弾いています。

324:ライブでちょっと変えている部分があるので、それを反映しています。『鯛獲る』の時は敢えて打ち込みのドラムにしたんですけど、今改めて聴いたら「これは生でやっても良くない?」ってなったんですよね。

赤飯:その結果、前のめりで勢いがある空気感が出ました。

――この曲、ライブでイントロが流れると、フロアで一斉にペンライトが点灯するんですよね。

324:もともとペンライトを使うファン層がいたんです。赤飯がもともとやっていた現場では当たり前だったから。俺らはロックバンド然とした感じでやろうとしていたから、一時は「ペンライト禁止」って言っていたんですけど。

赤飯:最初はロックバンドとしての体裁みたいなことをめちゃくちゃ気にしていたから、「ペンライトじゃなくて拳で語れ」みたいなことを言っていたんですけど。

324:でも、「ペンライトを振りたい人の居場所を奪うのは違うよね?」と。

赤飯:だから「それを納得行く形で肯定できるのって何だろう?」ってなって、この曲が生まれたんです。前は折って使うサイリウムを曲中で売っていたんですけど。

324:「曲中物販」って言っていました。

赤飯:「指定の曲以外で使うと爆発するぞ!」って(笑)。今は公式グッズのペンライト「非常灯」になりました。

324:ペンライトを振りたい人と、俺たちの「ロックバンドとしてやっていきたい」っていう意思の着地点となった歴史がある曲だよね?

赤飯:うん。

――サビで楽器隊が演奏しないで踊るというユニークなパフォーマンスを確立した曲でもありますね。

324:それも新しかったんですよね。「俺ら、楽器弾けるけど、置いちゃえばよくね?」って。

――ギターソロも敢えて弾かないですからね。この前の6周年ライブはパターゴルフをする「パターソロ」でしたし。

324:はい(笑)。

――踊るために外したギターとベースを受け取ったり、サビ明けで再び演奏してもらうためにギターとベースを手渡さなければいけないローディーさんが大変そうです。

赤飯:ローディー泣かせのバンドです。

324:ギターソロで風船ギターを使うところで本当のギターを渡されて、「こっちじゃないよ!」ってなったりすることがあります(笑)。

赤飯:サーキットイベントとかで、たまたまこの曲を観た人が「あんなのバンドじゃねえ!」ってブチ切れているのが面白いです。

324:まあ、あんなパフォーマンスを観たらそう思うだろうね。

赤飯:でも、「この曲の後にゴリゴリに弾き倒してんの見逃してんねんぞ」って(笑)。

 

 

推しどこメモリアル

――去年の1月に配信した曲ですけど、新録ですね。

赤飯:はい。1人で歌い直しているアルバムバージョンです。

324:このバージョン、歌がすごく良い。全員で歌っていた曲を赤飯1人で歌ったことによって、多重録音の面白さがめちゃくちゃ出ています。いろんなキャラクターが現れて、ミュージカル感も出ていますね。

赤飯:ディズニーのショーっぽくなっています。

――この曲はライブでやると、すごくインパクトがありますよね。メンバー全員のローラースケートのパフォーマンスが飛び出しますし。

324:本気でふざけて楽しむっていうのは、このバンドのマインドとしてありますから、それがまさに表れている曲です。メンバー全員、楽しませることが好きなんですよね。

――そのマインドを共有しているのって、オメでたにとって大きいと思います。他の多くのバンドの場合、「なんで音楽と関係ないことをしなきゃいけないんだ!」って怒って、脱退するメンバーがいてもおかしくないですから。

赤飯:そうなんでしょうね(笑)。

――配信したバージョンは全員で歌っていて、ライブでは敢えて口パクでローラースケートで走り回る……という、徹底的に遊んでいる曲ですね。口パクアピールの、わざとらしく目立つインカムもふざけていますし。

324:風防がでかいですからね。

――6周年ライブの時は花道があったから、ローラースケート映えしていました。

赤飯:そうでしたね。「ウチら、花道が合うバンドなんや?」って思いました。

324:また「ロックバンドじゃねえ!」ってなるかな?

赤飯:やっぱ、ポップバンドなのかも(笑)。


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