NEWS 2022.03.31
「オメでたカバー横丁〜一番街〜」オフィシャルインタビュー
「オメでたカバー横丁〜一番街〜」オフィシャルインタビュー(其の一)
文:田中大
――いつかカバーアルバムを作りたいという気持ちは、おそらく前からありましたよね?
赤飯:はい。ずっと言ってました。
――このタイミングで実現した理由は、何だったんですか?
赤飯:曲が全然できひんくて。っていうかアウトプットの段階にまで至らなくて。叩き台を作って、ある程度進めていっても、「これは違うな」って頓挫することばっかりで。それはコロナ以降ずっとでしたね。ウチらってそもそも「赤飯の理想を形にする」っていうバンドで、それはライブでお客さんがわーっ!って盛り上がって、モッシュが起こって汗だくになって、そこに飛び込んでいったりもして、普段では見られないような光景を作ってみんなで共有する……っていうことなんです。自分はそういうライブに感動を覚えたから、それをいろんな人にも知ってもらいたくて。自分でもそういう景色を作りたくて活動してきたんですよね。でも、今のこういう状況によって、理想としていたことを追いかけられなくなってしまった。物理的に不可能になってしまった。つまり、自分の土台がなくなってしまったというか。それによって、どういうことを曲にしていいのかわからなくもなりもしました。例えばまっすぐなメッセージを届けるのもなんかしっくりこんし、そもそも今の自分自身がへこんでるのに、「元気出していこうぜ!」みたいなのも気持ち悪いし。そういう感じで、とにかく曲ができなくなってたんです。
――そこで浮上したアイディアが、カバーアルバム?
赤飯:はい。そんな状態になってる時にあの人(フィクサーF)が、「カバーをすればいいんじゃないの?」と。オメでたは1個1個のアウトプットに対して結構腰が重いバンドなので、「どういうものが好きなのか?」「何を楽しいと思えるのか?」というのを、カバーをすることによってフラットに捉えられるのかなと。そういうことも思いました。
――先ほどもおっしゃっていましたが、赤飯さんの理想の具現化はオメでたの出発点ですよね。「カバーを通じて様々な音楽の魅力を幅広い人に届ける」というのも、赤飯さんの音楽活動の原点に立ち還る行為なのかも。
赤飯:なるほど。たしかにそれはあるかもしれない。そもそもカバーが本業だった感じもありますから。
――歌い手として活動していた時は、まさにそうでしたからね。
赤飯:そうなんですよね。
――後ほど詳しくお話をすることになりますが……モーニング娘。が大好きで夢中になって研究しながら歌っている内に、女性声が出るようになったわけですし、「自分なりに取り込んでアウトプットする」っていうのは、赤飯さんの土台にあるものだと思います。カバーって、まさにそういう行為じゃないですか。
赤飯:間違いない! その通りです。
――今作にも収録されている「金太の大冒険」が配信されたのは2020年12月でしたが、この頃にはカバーアルバムの制作に向けて動き始めていたんですか?
赤飯:全然です。「金太の大冒険」は、ぽにきが「ウチらが一番やるべきことは、一番バカな曲を世の中に知ってもらうことだ」って言ってカバーすることになったんですよね。
――今回のアルバムは「金太の大冒険」も含めて9曲が収録されていますが、選曲に関してはどのような感じでした? メンバーのみなさんから挙がった候補もいろいろあったと思うんですが。
赤飯:候補を挙げたのは、わりと俺でしたね。俺のエゴです(笑)。でも、たくさん候補を挙げつつも実現しなかったものも多くて。
――許諾の問題?
赤飯:はい。昔の曲から現代のものに向かってチョイスしていく感じでした。わしはもともとおばあちゃん子で歌謡曲に慣れ親しんでましたし、そういうところも表れてる選曲なのかな?
――曲の候補を考えるのは楽しそうですね。
赤飯:楽しかったですよ。「こういう風にやったら楽しそう」って、想像も膨らみますから。
――バンドでコピーしたりカラオケで歌ったりすると、好きな曲がより自分のものになって、強く抱き締められた感覚になりますよね。自分たちなりに解釈をしてカバーするのも、そんな感覚じゃないですか?
赤飯:たしかに。その感じはあります。
――音楽が好きな人は、歌ったり演奏することによって愛着のある曲を自分なりの形で抱き締めた体験の持ち主が多いでしょうし、今回のアルバム制作の根本にあるのもそういうことだと思います。「音楽が好きだなあ」っていうシンプルな気持ちを再確認できた感覚もありますよね?
赤飯:はい。間違いないです。そういう純粋な気持ちを見つけたくて作ったっていうのは、すごく強いのかなと思います。
■「三百六十五歩のマーチ」(水前寺清子/1968年)
――「三百六十五歩のマーチ」は、赤飯さんが生まれるよりかなり前の曲ですね。
赤飯:これはアニメの『丸出だめ夫』のオープニングで、それも水前寺清子さんが歌ってたんですよ。それもあって自分の中に残ってる曲でした。「んにゃ んにゃ」って真似したりもしましたから。
――若い世代も結構知っているでしょうね。
赤飯:どこかで耳にしたことがあるんじゃないかと思います。
――頭にアナログレコード風のノイズ、プチプチ音が入っていますね。
赤飯:これは、アルバム制作の最後の方に出たアイディアです。作品全体の話にもなってくるんですけど、ジャケットを見てもらえばわかる通り、懐かしさ、レトロ感みたいなのが今の自分の中ですごく熱くて。その表現方法をじっくり探る旅が、今回の制作だった気がします。「三百六十五歩のマーチ」のサビとAメロが先に出来上がったんですけど、イントロはなかなか決まらなくて。そういうところも含めて、このアルバムが全体としてまとまるやり方を考えた時に、「ど頭をアナログレコードっぽい幕開けにしたらどうなのかな?」っていうアイディアが出てきました。
――「三百六十五歩のマーチ」の原曲はブラスとかも入ったマーチ調ですけど、このカバーは生々しいロックバンドのサウンドに仕上がっていますね。
赤飯:そうなんです。これも全体の話に繋がるんですけど……今までのオメでたはすごく同期がゴリゴリで、「楽器を前面に押し出す」っていうのを疎かにしていたように感じていて。だから極端に言うと「生楽器だけでいいや」くらいの感覚も出てきているんですよね。今回の他の曲も含めて「もっとメンバー個々の人となり、弾いてる姿、存在自体をしっかり感じてもらえる音作りをしていこうよ」って再認識しながら作ってました。同期が今まで通り入ってはいるんですけど、「楽器を支えるために入ってる」みたいな寄り添い方になってると思います。
――サウンド面に関する意識変化とも繋がるのかもしれませんが、今回の各曲には赤飯さんの歌唱法、声質、声の響かせ方のバリエーションが目いっぱいに注ぎ込まれている印象もしました。もともと幅広い歌唱法の持ち主ですけど、1曲の中にかなり注ぎ込んでいますよね?
赤飯:はい。まさしくです。
――「三百六十五歩のマーチ」は、演歌的なこぶしも響かせているじゃないですか。
赤飯:もともと歌謡曲が好きですから、「歌謡曲っぽく歌おう」っていうことも自然と考えてました。でも、シャウトも好きですから叫びますし。とはいえ全体を通してチータさん(チータ=水前寺清子の愛称)はそこにちゃんといらっしゃって。そういうものでありつつ「meets マンソン」みたいな(笑)。
――水前寺清子さん meets マリリン・マンソン?
赤飯:はい(笑)。それがテーマでした。「ズダダダッタ ズダダダッタ」だから、「これは混ぜるしかない!」と、みんながなってて。
――さすが、発想がどうかしてるオメでた(笑)。
赤飯:チータさんが歌ってる背後でマリリン・マンソンがチラ見してるような感じというか(笑)。「The Beautiful People」のライブ盤で、マンソンが“How do you feel to be one of the beautiful people?”とシャウトするところがあって、その要素をちょっと入れたりもしてます。
――他の曲もそうですけど、耳を凝らすと何かが引用されていて、その要素の理由を想像すると面白いネタもかなり盛り込んでいますよね?
赤飯:はい。そういうのもぜひ楽しんでいただきたいですね。
――ラウドロックはもちろんですけど、歌謡曲や演歌も赤飯さんのルーツですよね? おばあさまと一緒に演歌番組を観ていたそうですし。
赤飯:はい。演歌の番組も観てましたからね。あと、シャ乱Qをめっちゃコピーしてたのも演歌と繋がったんです。つんく♂さんのビブラートのあの振幅がなかなかコピーできなくて、いろいろ探求する中で演歌に着目して、いろんな曲をコピーしていく内にどハマりするようになったのが前川清さん。だから演歌、歌謡曲的な節回しは大好きです。
――赤飯さんの歌は、長年の研究と鍛錬の上に成り立っていますから、「声ヲタク」と言っても良いのかも。
赤飯:そうですね。でも、コピーをする弊害っていうのもあって。なぜなら「その人にしか聞こえない」っていうものになりがちでもあるので。「自分の本当の声って何?」っていうコンプレックスは、ここ14、15年くらいずっとありました。
――なるほど。
赤飯:でも、オメでたを始めてからだんだんと自分の声みたいなものが見つかってきたんですよね。一時期は「自分の声はこれなんだよ」っていうのをやりたいがために、今までに培ってきたものを一旦削ぎ落すような作業もしていたわけです。「あの人っぽいエッセンスをちょっと入れてみよう」というのを取っ払ってやっていた時期を経て、今回はそういうところも改めて開き直りました。「あの人っぽく歌うのも全然ありやな」って思って、いろいろなエッセンスを積極的に取り入れながら歌いました。「自分を見失わずにエッセンスを借りる」みたいなことが、今回すごくできたと思ってます。
――「三百六十五歩のマーチ」のカバーも、そういう仕上がりですね。この曲に関する思い出は何かあります?
赤飯:ものまね番組が大好きやったから、「んにゃ」って誇張して歌う感じがすごく印象に残ってる曲でもあります。あと、やっぱり『丸出だめ夫』。あのアニメを通して聴いてた曲でもあるので、自分にとってアニソンでもあるのかな? アニソンとして自分の中に入ってきた曲なのかもしれないです。
――『とっても!ラッキーマン』もこの頃でしたっけ? オープニング主題歌が八代亜紀さんでしたけど。
赤飯:あのアニメは1993年か1994年くらいですかね? 歌詞全部覚えてますよ。
――八代さんも水前寺さんも当時の時点で既に大御所でしたし、そういう方々がアニメの曲を歌うというのはインパクトがありましたよ。
赤飯:アニメに携わってるスタッフさんの、新しいことに取り組もうとしていた気概も感じますよね。そういうところにもワクワクします。
――僕は赤飯さんよりも10歳くらい上ですけど、「三百六十五歩のマーチ」は運動会の思い出とも結びつく曲なんです。二人三脚の時に流れていましたから。
赤飯:なるほど! 《ワン・ツー ワン・ツー》が二人三脚の感じや。ウチらの時代は、永井真理子さんの「ミラクル・ガール」とかがよくかかってた気がする。そういえば《ワン・ツー ワン・ツー》で思い出したんですけど……《ワン・ツー ワン・ツー》ってみんなで繰り返し歌って、お客さんと一緒に行進できたら楽しいやろなと思ってるんですよ。前まではライブの時にフロアに降りてお客さんと一緒に何かするっていうのをずっとやってたから、もしまたそういうことができるような状況になったら、この曲を歌いながらお客さんを引き連れて行進したいですね。フロアをひたすら練り歩きたいです。
■「金太の大冒険」(つボイノリオ/1975年)
――「金太の大冒険」を初めて聴いたのは、いつ頃ですか?
赤飯:いつやろな? 小学校の頃にはもう知ってたからなあ。
――特に東海エリアの人々にとっては、つボイノリオさんはおなじみのはずですからね。
赤飯:そうなんです。小4くらいからラジオっ子やったし、つボイさんの『聞けば聞くほど』とかやってたから、わしも自然と知ってたんでしょうね。
――「金太の大冒険」のリリースタイミングで、つボイさんのラジオ番組に出演しましたよね?
赤飯:はい。「やってくれてありがとうね」っておっしゃってました。このカバーを公認してくださったんです。
――この曲に関しては、藤井亮さんが手がけたアニメーションのMVも素晴らしいです。藤井さんとの繋がりは、ここからでしたっけ?
赤飯:そうですね。これきっかけで藤井さんがむっちゃ好きなって、作品を片っ端から観るようになりました。イベントのチケットも取って普通にお客さんとして行ってますから。
――この曲を配信する前に「もうすぐ何かやるよ」っていう感じでYouTubeチャンネルで予告映像を流したのが記憶に残っています。イントロのあのムーディーなところだけ流して、大人っぽい曲をやるかのような匂わせをしていたんですけど……。
赤飯:普通にかっこいい曲が来そうな雰囲気やったのに(笑)。
――(笑)ライブでも異彩を放つ曲ですね。ミラーボールを2つ用意することが多いですが、特殊なメッセージ性を感じている人もいるようです。
赤飯:あれは「2つあると派手になる」っていう意味合いだけですよ。
――おっしゃる通りなんですよね。でも、なんか別の意味に捉える一派もいるらしく、僕はそれが不思議で仕方ないんです。
赤飯:「あのミラーボールって、そういうことですよね?」ってたまに言われるけど、何の話をされてるのか全然ピンと来んくて。「この人、大丈夫かな?」ってよく思いますね。
――吊るされた2つのミラーボールの間で直立して歌うことに関しても、諸説が飛び交っているようです。
赤飯:棒立ちしてるわけですけど、歌う時は背筋が伸びるんです。ピン!ってなるんで。発声の基本を忠実にやってるだけやのに、わけのわからん質問をよくされて、非常に心外です。
――この曲を歌う前のMCで「たまたま」という言葉を敢えて使っていると指摘している人もいるみたいですよ。
赤飯:それ、偶然ですよ。
――……という曲が、「金太の大冒険」ですね。
赤飯:はい。
――つまり、リスナーの心が綺麗かどうかがあぶり出される曲。心が汚れているとエッチな意味で聞こえてくるということですよね?
赤飯:その通り。これ、冒険譚の曲ですから。ロードムービーみたいな感じでもありますからね。別の意味で解釈する人は、何を言ってるんやろ? 卑猥な意味で捉える人、信じられない!
――藤井さんが手がけたMVも全編がシリアス。ハラハラドキドキが満載のスーパーアドベンチャーアニメーション作品です。
赤飯:はい。往年のSFのテイストでかっこよく仕上げてくださって大満足です。スペースオペラですからね。
――ハリウッドで実写化される可能性もあるかも。
赤飯:実現したら素敵ですね。主演はクリス・ヘムズワースかな。
――MVの再生数が伸び続けていますし、今後、海外でバズる可能性もあるかも。
赤飯:ウチのバンド、カバー曲が伸びがちなんです(笑)。あと、余談なんですけどこの曲をライブでやらないと、「セトリに金太入ってなかった。超嬉しい!」みたいなツイートをされるんですよ。どアンチがいる曲でもあります。
――拒否反応って、案外好きでしょ?
赤飯:うん、好き(笑)。「金太の大冒険」は日本語ならではの遊び心も入ってて、良い曲なんですよ。この曲は10年周期くらいで浮上するみたいで、2020年代は我々のカバーがそれをやれたのかなと思ってます。だから2030年代は、また新たな金太の担い手が現れるんでしょうね。
――女性アイドルグループとか?
赤飯:それ、いいですね。
■「ガラガラヘビがやってくる」(とんねるず/1992年)
――「ガラガラヘビがやってくる」は、『とんねるずのみなさんのおかげです』のオープニングテーマでしたね。
赤飯:はい。わしはとんねるず世代やから。とんねるずの番組を好きで観るようになったのは4歳とかでした。『みなさんのおかげです』は仮面ノリダーとか、いろんなパロディーをやってたんですよね。たかさん(石橋貴明)が田村正和さんの真似をして頭に火をつけたりとか(笑)。そういうコントのキャラクターの真似をして成長していったガキでございます。
――初めて買ったアルバムは、とんねるずの『みのもんたの逆襲』のCDですよね?
赤飯:そうなんです。当時の子供たちにとってテレビに出ているヒーローの代表的存在がとんねるずでしたからね。
――とんねるずはヒット曲がたくさんありますが、「ガラガラヘビがやってくる」を選んだ理由は?
赤飯:まあ、一番わかりやすいのかなと。
――先ほどの「金太の大冒険」とも繋がることですが、この曲をエッチな意味として捉える層もいるらしいですよ。
赤飯:そうみたいですね。困ったものです。
――《誰でもコン!コン!コン!》に過剰反応して、エッチな様子が頭に浮かぶみたいです。
赤飯:わしもこの曲をライブで歌う時、《誰でもコン!コン!コン!》に合わせて腰を突き出すムーブをやるんですけど、オノマトペ的に捉えてそうやってるだけなんですよ。
――わかっております。それにしても……改めて振り返ってみると、とんねるずは名曲がたくさんありますね。若いリスナーにも、ぜひいろいろ聴いていただきたい。
赤飯:ね? 「情けねえ」も大好き。
――「雨の西麻布」がヒットした時、『ザ・ベストテン』で観ていましたよ。
赤飯:いいなあ。リアルタイムで観れてるのがすごく羨ましい。
――「ガラガラヘビがやってくる」は『みなさんのおかげです』のオープニングで、クレイアニメと共に流れていましたよね?
赤飯:そう!
――『みなさんのおかげです』、毎週楽しみでした。今回のカバーには、この番組の小ネタが散りばめられているのも大切なポイントです。「おならじゃないのよ。ちょっと空気が入っただけ」とか。
赤飯:『近未来警察072』での、ある女優さんのセリフですね。
――「ラッコラッコ」は、ノリダーの怪人でしたっけ?
赤飯:はい。第1話です。ラッコ男が最初の怪人。
――「ガラガラヘビがやってくる」は、お母様とカラオケに行って歌った思い出もある曲なんですよね?
赤飯:はい。自分が主旋律を歌って、おかんに《ヘビイチ》とか合いの手を入れてもらったりしてました。
――この曲のMVを手掛けたのも藤井亮さん。クレイジーな仕上がりです。
赤飯:あのMVもどうかしてますよね。クソゲーム広告。それをテーマにして作っていただきました。あのMVは結構クリエイターのみなさんに刺さってるみたいです。藤井さんは僕がやりたいと思うようなことを先陣を切ってやっていらっしゃる存在なので、すごく憧れますね。
――「ガラガラヘビがやってくる」のカバーは、去年の秋の2マンツアーでやり始めていましたよね?
赤飯:はい。「最近、カバーをいろいろやってまして」っていう感じのことを言いつつやってました。イントロだけだと何の曲なのかわからなくて、ど頭で「ガラガラヘビよ 気をつけて」って言うと、おっきいおともだちのお客さんがはっ!とした表情で手を叩いて笑ってくれてましたね。
――「バーイ、センキュー」で終わるのは、原曲もそうでしたっけ?
赤飯:そうです。このネタはでんでんさんの芸人さん時代の決め台詞が元ネタらしいですよ。最近調べて知りました。とんねるずはちょっとマニアックな昔のネタを掘り起こしてやるところが結構あって。わしもその影響は受けてると思います。
――とんねるずはパロディの達人でもありますからね。ノリダーや072とかも含めて、コントはパロディが満載だったわけですし。
赤飯:記憶に残ってるのは、小野みゆきさんが出てた『デビルマン』。「小野みゆきさんがデビルマンに見える」っていう理由らしくて。小野みゆきさんがゲスト出演して、デビルマンのコスプレをしてコントを一緒にやってましたね。
――そんな記憶もよみがえるこの曲ですが、サウンド面でもいろいろ面白いことをやっています。
赤飯:この曲で大事なのは、「キューティーハニー」の要素が強いってこと。「どういう流れにする?」って大軸を決める時にぽにきが、「これ、キューティーハニーでやってみいへん?」って言いだしたから、「どういうことや?」って思って。それで2曲を聴き比べてみたら、「ガラガラヘビがやってくる」の原曲と倖田來未さんの「キューティーハニー」の構成、アレンジ感は、重なるところが多かったんです。それは発見でしたね。
――このカバーで《ヘビーフラッシュ!》って言っているのも、それが理由?
赤飯:そうなんです。それもぽにきの提案でした。あと、この曲はバンド全体が変化するキーポイントになった存在でもあるんです。さっきもちょっと話したことですけど……同期をバンバン使って原曲の雰囲気をそのまま拝借するみたいな感じに最初なってたんですけど、「そうじゃないだろう」と。「あくまで楽器ありきで、そこに薄っすらと同期を足して色を添えてもらうんだ」というのを、この曲によってようやく全員が納得できたんですよね。この曲がきっかけとなって、その後にやる曲もそうなっていきました。
■「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」 (H JUNGLE WITH T/1995年)
――ダウンタウンの浜田雅功さんと小室哲哉さんが組んだユニットの曲ですね。
赤飯:はい。J-POPのランキングを毎週チェックして、TSUTAYAに通ってた頃の曲ですわ。
――小室サウンドが日本全国を席巻していた時期です。
赤飯:そうでしたね。小室さんが『HEY!HEY!HEY!』のゲストで来て、「なんか一緒にやりましょうや」っていう話の流れできた曲が、これなんですよね。
――クラブミュージックのジャングルの要素を取り入れてJ-POPに仕上げたのが原曲ですが、カバーをするにあたってどうアレンジしようと考えていました?
赤飯:ど頭をすごく質素にしたくて。キャンプファイヤーを囲みながらギターをつま弾いて、みんなで鼻歌を歌ってる……くらいの感じを表現したいと思って。
――全体的にオーガニックなテイストですよね?
赤飯:そのキーワードで間違いない。この辺から「自分がやりたかったことって、オーガニックさを出すことなんじゃないか?」って意識するようになって、それはこの曲があったからですね。アレンジの段階で「どういう音を入れればいいんだろう?」ってなってた時に324がなんとなく弾いたスライドギターが、めっちゃくっちゃ良くて、「それが欲しかったんや、俺は!」って叫んだ曲なんです。なかなか掴めてなかった自分の理想を具現化するためのとっかかりを掴めたというか。「俺はこういう音が好きで、こういうことがやりたいんや」っていうのを、その時に324が弾いたスライドギターの音が明確にしてくれたんです。
――オーガニックでありつつラウドの要素も入っていて、かなり起伏に富んだ展開を遂げるアレンジですね。
赤飯:「みんなでキャンプファイヤーをしていたら、全然知らない部族に突然襲われて、祭りに巻き込まれていけにえにされるのかと思いきや、みんなで仲良くなって一緒に歌う」みたいなストーリーを勝手に思い浮かべてました。
――終盤で神々しい響きを帯びるのも印象的です。
赤飯:「そういう展開になりつつ、夢オチだった」っていう感じ(笑)。
――(笑)歌は、結構ハスキー気味ですよね?
赤飯:はい。浜田さんを意識して、武骨な感じを出したいと思ってたんです。でも、あの感じを出すのがなかなか難しくて、「誰を俺に降ろせばいいんや?」ってなった時に、ある有名なロックバンドのボーカリストが降りてきました。
――ハスキーで歪み気味のロックボーカリストといえば……あの人ですね?
赤飯:はい。そのイメージで歪んでるところを歌いました。でも、この曲を歌って喉を壊したんですけど(笑)。ポリープができました。
――akkinさんがサウンドアレンジで参加しているのも要注目ですね。akkinさんは「恋愛レボリューション21」と「君がいるだけで」にも参加していますが、外部のアレンジャーさんにお願いするのは初めて?
赤飯:はい。今回、初めて外部のアレンジャーさんと一緒に作業をしたんです。メンバーだけで作業してるとどうしても閉鎖的になっていくところもあって、停滞ムードになるんですよ。「WOW WAR TONIGHT」も最初はメンバーだけでやり始めたものの、「どうしたらいいの、これ?」ってなって、akkinさんにお願いすることになりました。「ここをもっとこうした方が聴きやすく、ポップになると思う」っていう提案がいろいろ返ってきて、発見がたくさんありましたね。それによって曲を俯瞰で見ることができましたし、頂いた意見に対してこちらからさらにアイディアを出したり。やり取りをしている中で、やっと納得のいくものになったのがこのアレンジです。ものすごく勉強をさせてもらいました。
■「うしろゆびさされ組」(うしろゆびさされ組/1985年)
――おニャン子クラブの曲を何かやりたいというのは、カバーアルバムを作ることになった時点で明確にありましたよね?
赤飯:はい。明確に。
――同じレコード会社だから、いろいろやりやすいですし。
赤飯:そう! まあ、そういうのがあったからポニーキャニオンを選んだわけではなくて、後から気づいて「ラッキー!」っていう感じなんですが(笑)。大先輩のバンドマンさんは、「工藤静香に会えるからポニーキャニオンに入った」みたいなことがあったみたいですけど。
――カバーをした「うしろゆびさされ組」は、アニメ『ハイスクール!奇面組』のオープニング主題歌でしたね。
赤飯:当然リアルタイムで聴いてた曲ではないんですけど、小学校の低学年か中学年くらいの時、夏休みに『ハイスクール!奇面組』の再放送を必ずやってたんです。だからこの曲は染みついてましたね。周りの子たちも観てたから、みんな口ずさんでましたよ。共通言語みたいになってました。
――アニメのオープニングでこの曲が流れる時の映像は、奇面組の5人と唯ちゃんと千絵ちゃんのバンド演奏だった記憶があります。
赤飯:そうそう! この曲を聴くと小学校の時の夏休みのあの感じを勝手に細胞が思い出しちゃう感じがありますねえ。僕にとっての泣き曲なんですよ。この曲いい! まじでめちゃくちゃいい!
――作詞が秋元康さん、作曲が後藤次利さん。数々の名曲を生んだゴールデンコンビです。「ガラガラヘビがやってくる」も、このおふたりですからね。
赤飯:そうなんです。「ちょっとワルなイメージのロックバンド的な要素をアイドルに足したらどうなるんだろう?」っていうのをやったのかなと、勝手に想像してます。
――この曲、リフがいいんですよ。
赤飯:そう! 原曲のリフが良かったので、「リフものの8ビートといえばMR. BIGや!」ってなって、324もものすごい速い弾きをして駆け上がってくれてます。
――あれはポール・ギルバートのイメージだったんですね。
赤飯:そうなんです。MR. BIGっぽい導入、展開のカバーになってますね。原曲のリフを活かしたヘヴィなリフにもできたし、やりたかったことを良いバランスで具現化できました。
――おニャン子クラブはユニット、メンバーソロも含めて名曲がたくさんありますけど、どの曲をカバーするか迷ったんじゃないですか?
赤飯:基本的におニャン子というよりうしろゆび、というよりゆうゆが好きだから、うしろゆびさされ組の曲を絶対にやりたかったんです。そこに迷いはなくて、選ぶとすればこの曲でした。
――うしろゆびさされ組も「渚の『・・・・・』」「女学生の決意」「バナナの涙」とか、素晴らしい曲がたくさんありますが、選ぶとすればこれだったんですね。
赤飯:そう。いい曲がたくさんあるけど、知名度という点でもこれなのかなと。
――女声を絶妙なポイントで使っていますね。
赤飯:やっぱゆうゆが好きやから、原曲の良さも上手いことはめたいと思ってて。でも、「女声で主旋律を歌うのは違う」っていうのが自分の中にあって。主旋律はMR. BIGのイメージで仕上げてるから、塩っ辛い声で行きたいと思ってました。「そういうのを女声コーラスでサポートしたらどうなるのか?」っていう実験的な意味合いもあってやってみたら、「案外ありやな」ってなりました。でも、2Aだけガラッと雰囲気を変えて、がっつり女声で歌ってます。女声で歌うのをネタや飛び道具ではなく、きちんと曲の流れの中にストーリーとして落とし込みたいって思ってたので。
――奇面組のメインキャラクターの一堂零の有名なセリフ「零ちゃんぶつじょ!」が盛り込まれているのも、要注目のポイントです。
赤飯:間奏でシャウトを入れたくなったんですけど、普通のシャウトを入れてもしゃあないので、「なんかないか? ……あっ、零ちゃんぶつじょ!だ」と。濁点がめっちゃ入ってるからシャウトにも合うんです。シャウトは濁点が大事。やってみたら「これや!」ってなりました。
――おニャン子クラブの曲も、若い世代にぜひ聴いてもらいたいですね。うしろ髪ひかれ隊も、良い曲がたくさんありましたし。後にソロで大活躍する工藤静香さんも、ここが出発点みたいなものですからね。
赤飯:うしろ髪ひかれ隊で工藤静香さんの歌唱力が認められて、後のソロデビューのきっかけになったんです。最初は生稲晃子さんがセンターだったんですよ。
――強い思い入れのあるおニャン子クラブのカバーができて、夢が叶った感じもあるんじゃないですか?
赤飯:まだ夢の途中ですよ。ゆうゆに聴いてもらうのが夢なので。
――なるほど(笑)。
赤飯:ゆうゆさんはもう芸能界を引退されてるので、どこかで聴いていただければ嬉しいんですけど。
■「マル・マル・モリ・モリ!」 (薫と友樹、たまにムック。/2011年)
――ドラマ『マルモのおきて』の主題歌。「薫と友樹、たまにムック」名義ですが、芦田愛菜さんと鈴木福くんですね。
赤飯:はい。これは前にカバーしたことがあるんですよ。前の事務所にいた時の企画盤でやったので。それを全部録り直しました。原曲は小っちゃいお友達にもお馴染みでしょうね。
――今回のカバーの中で一番最近の曲ですけど、芦田愛菜さんと鈴木福くんも、もう高校生なんですよね。
赤飯:そう。もう立派な大人です。実はこの曲のMVに福くんの弟さんと妹さんに出ていただいたんですよ。原曲の振り付けを手掛けた先生にも来ていただいて、今回のMVのための振り付けも考えてくださっています。振り付けの先生に許可を取りに行ったら、「私がやります!」って言ってくださったんです。
――作詞・作曲をした宮下浩司さんは、ミクスチャーバンドのJINDOUのギタリストだったんですね。僕、『ボボボーボ・ボーボボ』が大好きで、JINDOUの「WILD CHALLENGER」がアニメのオープニングテーマだったんですよ。だから、「マル・マル・モリ・モリ!」を手掛けたのが宮下さんだと知って、とても嬉しくなりました。
赤飯:『ボボボーボ・ボーボボ』のバンド? まじか? 俺、ウルフルズの「バカサバイバー」が『ボボボーボ・ボーボボ』のオープニングに使われてるって最近知って、衝撃を受けたんですよ。
――「マル・マル・モリ・モリ!」が大ヒットした2011年は、上京する前ですか?
赤飯:ぎり上京してた時期だと思います。ニコ動でいろいろやったり、そういうのを2013年、2014年くらいまでやってたのかな?
――今回のアルバムのために新録したそうですが、前のバージョンとの違いは、例えばどんな辺りですか?
赤飯:間のセリフを聴き比べていただけると、違っているのがわかると思います。前のバージョンで許可の申請を出したら、さすがに通らなかったんです(笑)。前のバージョンも正しいことを言ってたんですけど……。まあ、聴き比べてみると面白いと思いますよ。