NEWS 2022.05.20
「オメでたカバー劇場」オフィシャルライブレポート!
“カバー曲しかやらないライブ”という初の試みだった『オメでたカバー劇場』。「少しはオリジナル曲もやるんでしょ?」と思っていたオメっ子(オメでたい頭でなによりのファンの呼称)もいたのかもしれないが、演奏したのはカバー曲のみ。初カバーアルバム『オメでたカバー横丁〜一番街〜』の収録曲の他、事前に募ったリクエストも反映していたこのライブは、レアな内容だったと同時に圧倒的に楽しかった。5月13日(金)味園ユニバース『オメでたカバー劇場〜大阪座〜』、5月15日(日)東京キネマ倶楽部『オメでたカバー劇場〜東京座〜』――行われた2公演の内、東京の模様をレポートする。
オメでたのライブの開演前に「Pretender」(Official髭男dism)が流れるのがほぼ恒例化しているのを記憶している人は多いと思う。この日は「Pretender」が流れる中、赤飯(Vo.)、ぽにきんぐだむ(Gt.&Vo.)、324(Gt.)、mao(Ba.)、ミト充(Dr.)が登場。「この曲がSEなんて、珍しいなあ」とのんびりと思っていたのだが、始まったライブの1曲目が「Pretender」だったので仰天! あの印象的なギターのイントロを324が奏でた後、マイクに向かって一心に歌い始めた赤飯。大きなダルマや白鶴の酒樽などが置かれたステージでヒゲ男の名曲が鳴り響いているのが不思議な印象だったが、演奏が終了した瞬間、感動を伝える大きな拍手が起こっていた。
美しいオープニングを経てスタートした2曲目は「金太の大冒険 」(つボイノリオ)。ずっこけた人が万が一いたとするならば、歌詞のところどころがエッチな言葉に聞こえてしまっているのだろう。本当に嘆かわしい。一体どこがエッチだというのだろう? たまたま何らかの要因でそのように聞こえることがあるのかもしれないが、私にはまったく理解ができないのだ。この曲は、手に汗握る大冒険を描いたスペースオペラとして、幅広い世代から愛され続けている。「ハリウッドで実写化される際の主役はクリス・ヘムズワースかも」と赤飯は言っていた。非常に納得させられるものがある。天井から吊り下げられたミラーボールが金色の光の粒子を放つ中、時にはムーディーに、時にはラウドに、時には朗々と歌い上げられる様に耳を傾けるのは、実にロマンチックな体験であった。
『とんねるずのみなさんのおかげです』のコントのセリフの引用と倖田來未の「キューティーハニー」のエッセンスの融合のさせ方が絶妙な「ガラガラヘビがやってくる」(とんねるず)は、ライブで聴いても抜群にかっこよかった。この曲がフロアをさらに沸かせたところで迎えた小休止。「Pretender」の《グッバイ》、「金太の大冒険」の《さようなら》、「ガラガラヘビがやってくる」を締めくくる《バーイ、センキュー》――3曲続けて別れの挨拶が入っていることに触れて、「帰りたくてしゃあないバンド?」と語り合っていた赤飯とぽにきんぐだむ。彼らのやり取りがオメっ子たちを和ませた後、「俺が推してるアイドルグループの曲をやります!」と、赤飯が高らかに宣言。「俺が“週の真ん中水曜日。真ん中もっこり”って言ったら“夕やけニャンニャン!”って言ってもらっていいですか?」と呼びかけた。そしてスタートしたのは、「うしろゆびさされ組」(うしろゆびさされ組)。原曲のキャッチーなリフを活かしつつ、アメリカンハードロック風味も添加したサウンドが気持ちいい。マイクスタンドを傾けながら歌う赤飯がロックスターとしてのオーラを放ち、ぽにきんぐだむ、324、mao、ミト充によるエネルギッシュなサウンドが高鳴っていく。『夕やけニャンニャン』が放送されていた当時のフジテレビの所在地・新宿区河田町、ハードロックの本場のカリフォルニア州ロサンゼルス、東京キネマ倶楽部がある台東区根岸――時空を超えた融合が妖しい磁場を放っていた。
セットリストの全曲がカバーなので落ち着いたムードになるかと思いきや、盛り上がれる場面が満載だったこのライブ。良い汗をかける曲となっていたのが「三百六十五歩のマーチ」(水前寺清子)だった。《ワン・ツー ワン・ツー》という赤飯の歌声に合わせ、腕と足を上げながらはしゃいでいたオメっ子たち。右、左、後ろ――身体の向きを時々変えながら、その場で行進するかのようにステップを踏み続ける人々の姿が壮観だった。そして、その次に披露された「マル・マル・モリ・モリ!」(薫と友樹、たまにムック。)も爽快な一体感を生んでいた。振り付けを踊っている人々の表情が実に楽しそう。モッシュ、ダイブ、クラウドサーフなどができない状況下でこの曲が生み出した光景は、新しいライブの楽しみ方を提示していたと言えるだろう。
公式グッズのサイリウム “非常灯”のカラフルな光がフロアの全面で輝き、オメっ子たちがクルクルと回転しながら盛り上がった「さくらんぼ」(大塚愛)を経て、再びMCタイム。テレビ番組『ASAYAN』のオーディション企画から誕生したアイドルグループ・モーニング娘。への深い想いを赤飯はじっくりと語った。シングルCD『愛の種』を5日間で5万枚売り切る――というデビューのための条件を課されたモー娘。の初期メンバーたち。4日目のナゴヤ球場で「売り切れました!」というスタッフの声が響き渡った瞬間の地鳴りのようなどよめきを体感した少年時代の彼は、コテハンで2ちゃんねるに書き込み、様々なスレッドを立ち上げるくらいのモー娘。ファンだったのだという。公式カバーをリリースできた感動を噛み締めながら「2ちゃんねるドリーム叶えてやったわ!」と言った彼を、割れんばかりの拍手が祝福した。そして披露された「恋愛レボリューション21」(モーニング娘。)。スタンドマイクに向かいながら歌い、振り付けを完璧に踊っている姿が神々しい。キレの良い動きは、この曲が赤飯の肉体と精神の主要な一部であることを窺わせた。「モー娘。のメンバーになりたい!」というファンとしてのピュアな願いが、いつしか「モー娘。という概念になりたい!」にまで至っていた人物の夢が素敵な未来に辿り着いている様は、観ている我々の胸を激しく打つものがあった。
ものまね番組のMC風のナレーションを324が務めつつ披露された「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」。郷ひろみの大ヒット曲だが、これに関しては“カバー”ではなく「2億4千万のものまねメドレー」だった。カラオケ音源が流れる中、『ちびまる子ちゃん』の丸尾くん→若本規夫→ゆっくり実況→郷ひろみ→布施明→氷室京介→井上陽水→松山千春→PENICILLIN→ディズニーファミリー→桑田佳祐→河村隆一→大友康平→碇シンジ……有名人、アニメのキャラクター、歌手の声色で歌い、YOUの「ほんとむかつく」で締めくくる赤飯のものまねを堪能したオメっ子たちは大喝采。「これ、毎回やった方がいいと思うよ。何かでバズるタイミングが来ると思う」と、ぽにきんぐだむも感心していた。
「もうすぐ夏フェスシーズンですので、夏にぴったりな曲を」とぽにきんぐだむが言い、赤飯の「winter fall」というタイトルコールと共にスタートした「夏色」(ゆず)。L'Arc〜en〜Cielのカバーを待ち構えてしまった自分が悔しい……。赤飯がアコースティックギターを弾き、ぽにきんぐだむがタンバリンを叩き、ふたりでハーモニーを響かせる様が爽やかだった。歌い終わった彼らはステージの下手側にあるバルコニーに向かって歩き、先に準備を整えていた324、mao、ミト充と合流。「♪カントリーロード この道 ずっとゆけば アコースティックセットに つづいてる 気がする」と、歌いながら階段を上る赤飯の即興が冴えていた。バルコニーはフロアの下手側エリアから見えにくいので、オメっ子たちは少し上手側に移動。互いに配慮し合う “思いやりのぶつけ合い”を日頃からモットーとしているオメでたのライブならではの臨機応変な対応であった。
「夜の帳が落ちてきました。ここはどこかのサマーキャンプ場です。我々はキャンプをしております。“どうせやったらみんなで1曲、セッションしいひん?”とミトが言いました。何で関西弁なんやろう? 誰も突っ込みませんでした」――赤飯のナレーションを経て、アコースティックセッションで届けられた「君がいるだけで」(米米CLUB)は、大自然の中で焚火を囲みながら過ごしているかのような落ち着いたムードを作り上げていた。「こうしてオメでたい頭でなによりのサマーキャンプは幕を閉じた。果たして真犯人は誰だ? Next Conan’s HINT! サスペンダー!」――新衣装のサスペンダーが目を引くミト充が真犯人だとコナンの名推理を待つまでもなく判明したところでアコースティックコーナーは終了。何の事件だったのかはよくわからない……。唐突な赤飯のボケが爆笑を度々起こしつつも、温かいサウンドを堪能できたひと時であった。
「2曲続けてリクエストの曲をやります。1曲はわしらの後輩にあたるのかな?」と赤飯が言い、演奏がスタートした「メジャーデビュー曲」(お目出たズ)。オメでたのコピーバンドとしての活動を経て昨年9月にメジャーデビューした “お目出たズ”の曲を聴けるとは予想外だった。憧れの大先輩にカバーしてもらえて、お目出たズのメンバーたちは目玉がさらに飛び出るほど嬉しかったに違いない。そしてこの曲の直後、ギターイントロが始まるや否やオメっ子たちが沸いていたのが「ぶっ生き返す‼」(マキシマム ザ ホルモン)。コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のセキはんである赤飯がオメでたでホルモンをカバーする……というのは、もはや何号店なのかよく分からないややこしさだが、多彩な歌声、重低音、爆音と共に届けられたこの曲は文句なしにかっこよかった。
「コミュニケーションがとれない時代になったじゃないですか? だからお客さんとの距離を縮めるじゃないけど、対話ができるライブを作りたいというのもあって、こういう形をとらせてもらったんです」と、今回のライブの主旨を語ったぽにきんぐだむ。赤飯も新型コロナウイルスの影響で平時のようなライブができない状況が続いていることに触れた。「人が好き!」と心から思えるライブの楽しさを広めたくてバンドを結成したのに思うように活動ができなくなり、何を歌ったら良いのかわからなくなった中、担当ディレクターからの「カバーアルバムを作ってみたら?」という提案で作り始めたのが『オメでたカバー横丁〜一番街〜』だったのだという。「作ってる時に自分たちに足りなかったもの、俺たちらしさを再確認できた。このアルバムがなかったら多分、次に進むことができなかったと思ってる。次に進むために絶対に必要な1枚やったって俺たちは思ってます。このライブに来るという選択をしてくれて本当にありがとう。歴史の目撃者になってます。前に進む気しかないので安心してついてきてください」と力強く語っていた赤飯。新曲制作や次の全国ツアーに向けて着々と動いているという報告は、オメっ子たちを大喜びさせていた。
「そういう瞬間もあったよね?って後になって振り返って笑えるような、そういう未来をみんなで作れたらなと……めっちゃかっこいいこと言ってる(笑)。そんな気持ちがこの曲にはしっくりきて、シンパシーを感じています」という言葉を赤飯が添えて歌い始めた「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント〜」(H JUNGLE WITH T)。様々な出来事が起こる日々に向き合い、時には仲間と笑い合いながら生きていく姿が描かれているこの曲は、今のオメでたにふさわしいテーマソングとなっていた。そして、ライブのラストを飾ったのは「明日があるさ」(坂本九)。ロカビリーテイストのサウンドが手拍子を誘い、終盤に差しかかった時にフロアの全面で一斉に掲げられたオメっ子たちのダブルピース。「俺らとあんたら、みんな合わせたこの空間がオメでたい頭でなによりだ!」――雄々しい叫びと共に演奏が締め括られた直後の余韻は、とても清々しかった。
ライブ終了後は、オフィシャル抽選先行限定販売されたオメコンボチケットの特典“反省会(アフタートーク)”。オメコンボチケットのもうひとつの特典である『オメでたカバー横丁〜一番街〜』のアナログレコードや、収録曲についてメンバーたちが語り合った。“#オメ劇”で寄せられたツイート、フロアから直接届けられた質問に対する5人の回答も、貴重なエピソードが満載。そして、「マル・マル・モリ・モリ!」の振り付けのレクチャーの後、TikTok動画も撮影された。いつもサービス満載のオメコンボチケットだが、今回もオメっ子たちを大満足させたはずだ。
文:田中大
写真:ゆうと。
オメでたい頭でなにより
「オメでたカバー劇場〜東京座〜」
2022年5月15日(日)東京キネマ倶楽部
1:Pretender
2:金太の大冒険
3:ガラガラヘビがやってくる
4:うしろゆびさされ組
5:三百六十五歩のマーチ
6:マル・マル・モリ・モリ!
7:さくらんぼ
8:恋愛レボリューション21
9:2億4000万のものまねメドレー
10:夏色
11:君がいるだけで
12:メジャーデビュー曲
13:ぶっ生き返す
14:WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント〜
15:明日があるさ
「オメでたカバー横丁 〜一番街〜」配信中!!
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