オメでたい頭でなにより│オメでたい頭でなにより 公式FC「オメオメCLUB」

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「オメでたい頭でなにより4」オフィシャルインタビュー

2024.01.26

――前作の『オメでたい頭でなにより3』がリリースされたのが2022年9月28日。その後、全国ツアーで各地を回って、今年に入ってからは新曲のリリースもしていましたが、どのような日々だったと感じていますか?

ぽにきんぐだむ:徐々にライブの制約がなくなったこともあり、楽曲制作のメインメンバーである赤飯、324、僕のモチベーションが明らかに変わりましたね。

――ライブができるようになったこと以外で、変化を生むきっかけは何かありました?

ぽにきんぐだむ:ありました。楽曲提供のお話をコロナ禍の期間に頂いて、それが大きかったです。オメでたに求められているもの、オメでたのイメージみたいなものを改めて僕ら自身が見つめ直す機会になったので。

――自覚するようになったオメでたに求められているものとは、どのようなことでした?

ぽにきんぐだむ:お祭り感、楽しくてたくさんのセクションやギミックがあるもの……というようなことだと思います。世間的にはそういうイメージがあるんだなと再認識できました。その上で『オメでたい頭でなにより1』『オメでたい頭でなにより2』でやっていたようなことをさらにブラッシュアップしながらライブに落とし込むようになったのが、今回のアルバムの制作のスタートラインでしたね。「着火繚乱ビンビンビン」も、まさにそういう中から生まれた曲です。わかりやすくテーマやフックとなる要素を設定して、それを軸に掘り下げながら広げました。そういう制作の進め方が確立できてから、いろいろな曲を作れるようになったので、それが今回のアルバムに関して大きかったのかなと思います。

――324さんと赤飯さんは、どのように思いますか?

324:まさしくその通りですね。

赤飯:一言一句違わず同感です。

――前回のアルバムの制作時は「どんな曲を作ったらいいのかわからない……」という悩みと向き合っていましたが、今作の制作ではそういうストレスからも解放されたんですね?

ぽにきんぐだむ:はい。

324:迷いとか、「何をしたらいいんだろう?」というのはなかったですね。

赤飯:なかった。

――最近の状況に関しては、悶々とした感情が少なからず反映されていた『オメでたい頭でなにより3』の曲たちが違った印象となりつつあるのも興味深い点です。例えばライブでの「すばらしい時代」は、希望を感じさせる曲として響きわたっているじゃないですか。

ぽにきんぐだむ:間違いないですね。個人的には「そうなればいいな」と思いながらリリースしたアルバムだったんですけど、本当にそうなったと思います。「すばらしい時代」に関しては、作った当時の赤飯は違ったことを考えていたのかもしれないけど。

赤飯:曲も生き物やから、いろんな人に聴いてもらって、触ってもらって、自分たちで歌っていく中で変化していくんですよね。そういうことはもともと感じていたんですけど、「すばらしい時代」で改めてそう思いました。ネガティブなものがポジティブに変わっていくのは、すごく嬉しいです。

――前向きに制作を進められるようになった中、最初にリリースされたのが「着火繚乱ビンビンビン」。リリース前からライブで披露していましたが、お客さんが盛り上がっている様子も、みなさんのモチベーションを後押ししたんじゃないですか?

ぽにきんぐだむ:まさしくそうでした。「オメでたが帰ってきたね」と言われて、すごく安心しましたから。

324:アルバムに向かって動き始めて最初にできたのが、多分この曲だったと思います。「めっちゃいいね!」ってメンバー内でもなったし、ライブでのお客さんの反応も良かったんですよね。「この曲があるから大丈夫。俺ららしい曲が既に1つある」ってなっていたので、安心してアルバムの制作に臨むことができたんです。そういう意味でも「着火繚乱ビンビンビン」は意味のある1曲でした。

――最近の制作に関しては、メンバーそれぞれの役割分担が明確にできるようになっているというのもありますよね?

324:はい。「ここまでは頑張るけど、ここからは力を借りる」みたいな役割分担ができています。

赤飯:「ここからは自分がどれだけアクセルを踏んだとしても」というのがあるんです。「ここからは任せる」ってやった方がチームにとってプラスになると感じるようになりました。

――例えばサウンド面に関してだったら、その道のプロフェッショナルである324さんにお任せするというようなことですよね?

赤飯:そういうことです。

324:もちろん意見は聞くけどね。

赤飯:うん。意見を汲み取ってもらった上でのことなので。

――役割分担が確立されていることも影響しているのだと思いますが、全体的にバランスの良さを感じるのも今回のアルバムです。「楽しく盛り上がれる」「ふざける」「かっこいい」というオメでたの3大要素が伸び伸びと発揮されているので、この曲順のままライブのセットリストにできそうです。

ぽにきんぐだむ:アルバムの曲順を決めることになった時、メンバーそれぞれの思う並びにそんなに違いがなかったんですよね。

――1曲目の「鼓舞激励」は、ライブのオープニングにもぴったりだと思います。

ぽにきんぐだむ:2月から始まるワンマンツアーのオープニングをイメージして歌詞を書いたら、324や赤飯も「それだね!」と。「ライブをこう始めたい」というイメージが明確にあったんです。お客さんのシンガロングと共にこの曲が始まって、2曲目の「着火繚乱ビンビンビン」でアクセルを踏んでいく……という流れを明確に思い描いていました。

324:「鼓舞激励」は「サビでシンガロングしたい」という具体的なアイディアがあったので、作る上で迷いはなかったです。最初はインストのつもりだったので変化はしていったんですけど、かなり好きに作らせてもらいました。

ぽにきんぐだむ:「それぞれのパートのメンバーがいて、じゃあ始めましょう!」というような曲なので、「改めての自己紹介」みたいなこともしていますね。そこにお客さんのシンガロングが加わり「この全員でライブを始めますよ」というイメージです。

――終盤の赤飯さんのシャウトが強烈です。

赤飯:こういうのはお任せください。「赤飯が出てきたらシャウトしてないのは変」みたいなところもあると思うので。

324:たしかにそういうイメージはある。

赤飯:でしょ? 黄門様が出てきて印籠を出さへんかったら、「お前、いつ出すねん?」ってなるやろ? そういうことですね。

――変身しない仮面ライダーは、子供たちががっかりしますからね。

赤飯:そんなのやだもん。スペシウム光線を出さないウルトラマンとか。

324:ただ素手で怪獣をボコって終わるウルトラマンは嫌だな(笑)。

赤飯:後味の悪さを生まないように思いっきりシャウトしています。

――「鼓舞激励」から始まり「着火繚乱ビンビンビン」に突入する……という曲順は、2月から始まるツアーの決定事項ではないでしょうか?

ぽにきんぐだむ:完全にそうですね。

赤飯:「鼓舞激励」の後、いきなり「花魁ドリルスピン」が始まるような変化球をやってもいいけどね。

324:フロアが温まりきってたら、そういうのも面白いのかも。

――「着火繚乱ビンビンビン」はリリースしてから数ヶ月経っていますが、改めてどのような曲だと感じていますか?

赤飯:どこの場に行っても通用する曲ですね。

ぽにきんぐだむ:長らく「鯛獲る」がライブの1曲目という感じだったんですけど、「あれに代わる曲は作れないかな?」というのがずっとあったんです。「着火繚乱ビンビンビン」が、そういう存在になりました。フェスだろうが対バンだろうが、この曲に任せられるので。

324:1曲目が「鯛獲る」というのに自分たちで飽きていたところもあったんです(笑)。1音目からしっかりブチ上がれるというのを「着火繚乱ビンビンビン」で作れたから、それはすごく良かったなと思っています。

――「地下室の王」もライブで盛り上がりそうです。サウンドのブルージーなテイストが新鮮ですが、今までのオメでたにはなかったタイプですよね?

324:そうですね。僕が普段作っているような内省的な感じではなくて、「俺たちすごいだろ? 面白いだろ? かっこいいだろ?」っていうのをやりたかったので、赤飯とぽにきの目線に立ってリリックを書き進めていきました。「ぽにきはこういうことを言いそうで、こういうことを考えてそうで、こういうことを言ったらかっこいいだろうな」「赤飯はこういう感じで斜に構えつつも熱く歌うだろうな」とかも思い描いていましたね。

――サウンド面に関しては、どのようなことを考えていましたか?

324:最近の僕のトレンドがヒップホップなので、ラップっぽいリリックにも挑戦しつつ、今までになかった新しいものを作りたいと思っていました。「アコギのスラム奏法とバンドサウンドを組み合わせたらどうだろう?」と。そこにラップを組み合わせつつ、曲の構成はダンスミュージック。そして「サビのギターはドロップチューニングで、ヘヴィなパートをボトルネックを使って弾いたらかっこいいんじゃないか?」というのがあったので、7弦ギターとアコギのスライドプレイを融合させています。

――ライブでは7弦ギターとアコギのボトルネック奏法の部分をどう表現するんですか?

324:アコギをスタンドにセッティングして弾いて、またエレキに戻る……みたいなことをやるのかな? 「新しいタイプの曲を作る」というところから始まった曲なので、ライブでどうやるかはあんまり考えていなかったんですけど。

赤飯:筋肉少女帯で橘高文彦さんがやっているあの感じですね。橘高さんはアコギをスタンドに固定してエレキと交互に弾いているので。それがついにオメでたのライブで展開されるんですかね? そう思うと、とてもワクワクします。

ぽにきんぐだむ:ああいうの、かっこいいもんね?

赤飯:うん。生演奏でかっこいいグルーヴが出たらテンションが上がりますよ。

――口笛が入っていますが、これは誰が吹いているんですか?

324:僕です。本当は誰か別の人にやってもらいたかったんですけど、デモで吹いたものがそのまま採用されました。

――上手いですね。

324:メロダインとかで修正しています(笑)。

赤飯:本番ではお客さんに口笛を吹いてもらうの?

324:その後にコールがあるから、お客さんにはそこを歌ってもらうことになるんじゃない?

赤飯:そうか。

324:ここは手持無沙汰だろうから、口笛は赤飯さんが吹いてください。

赤飯:わかりました。

324:そこがどうなるのかも、ライブをお楽しみということで。

――「Move your Heart」と「ADVANCE TiME」も、ライブで盛り上がりそうです。

ぽにきんぐだむ:「Move your Heart」は、もともと持っていた324のデモの蔵出しなんです。ちょっと洋楽感があるんですかね? シーケンスが鳴っていなくて、楽器だけのごり押しサウンドです。曲の途中でお客さんを座らせてからジャンプするというのをやりたいがために作った曲でもあります。

――こういうラウドロックは、学生時代の赤飯さんがたくさん聴いていた音楽ですよね?

赤飯:はい。こういうのは血が騒ぎます。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、システム・オブ・ア・ダウンとか、そういう系のものをたくさん聴いていたので。

――本能的に反応できるサウンド?

赤飯:はい。細かいことを気にせず、自分の中から出てきたものをそのまま歌に込められます。メッセージの熱い部分はぽにきが作ってくれているので、自分はそこに乗っかりつつさらに背中を押すような気持ちで歌わせてもらっています。

――324さんはこの曲のデモを作った時に、どのようなことを考えていたんですか?

324:グルーヴとリフの一発押しで、メロディは敢えてつけていなかったんです。歌う人が気持ちいいように言葉を嵌めて、リリックとフロウで持って行くような曲にしたいと思っていました。

――オメでたでやることを想定したデモだったんですか?

324:そういうことではなかったんですけど、オメでたをやりながら培ったことを活かして作ったようなデモだったんです。だからオメでたでやることになったのは、必然だったのかなと思います。

ぽにきんぐだむ:最初の仮タイトルは、「移民風」だったんですよね。最終的にそういう感じにはならなかったんですけど。

――レッド・ツェッペリンの「移民の歌」のイメージが当初あったということですか?

324:そうなんです。リフのリファレンス、オマージュみたいなことだったんですけど。

赤飯:結果的には、全然別の感じの曲になりましたね。

――中西航介さんが作曲した「ADVANCE TiME」も、かっこいいサウンドです。

ぽにきんぐだむ:僕もめちゃめちゃ好きです。

――作詞は、ぽにきんぐだむさんですね。

ぽにきんぐだむ:はい。コロナ禍でライブができず、目立った活動が全然できない中、先輩とかから「コロナが明けたら必ずオメでたの時代が来るから大丈夫」と励まされることが多かったんです。「じゃあ、コロナが明けた時、自分は何を届けるのか?」と考えて、「励ましてくれた人たちへのアンサーとなる曲を書きたいな」と思いました。コロナ禍の頃に思っていたこと、仲間への感謝、「もう大丈夫です。ここから行きますよ」という想いを歌詞に込めています。

――この曲で歌っていることは、新しいライブハウスの形を作ることをテーマとした『大寿祭』『対寿祭』の背景にもある気持ちですよね?

ぽにきんぐだむ:まさしくその通りですね。

赤飯:こういう素直で熱いメッセージの歌詞を書くのは、自分はできないんです。でも、やりたくないわけではないんですよね。だから「ぽにきがこういう風に来るんやったら、自分からはこういうカードを切れば曲の勢いがよりつくだろうな」という感じで全力で乗っからせてもらっています。あと、オメでたを始めてから封印していたイガイガした太い感じの歌い方を「ADVANCE TiME」では久しぶりに試しているんですよね。それがアニソン感にも繋がっているというか。

ぽにきんぐだむ:たしかにこの曲、アニソン感があるのかも。

赤飯:うん。好きなアニソン感みたいなものを出せた気もしていて、「自分、そういえばこういう武器もあったよな」と改めて思い出すきっかけにもなりました。

324:あんまりオメでたでやってこなかったけど、メタルシャウト系ボーカリストというか。こういうのは僕も好きです。アニメタルみたいな感じというか。

赤飯:もともとそっち方面のボーカリストに憧れて大学の頃とかもやっていたんです。でも、オメでたを始めてからわりとそういう塩辛い感じを封印とまではいかないけど、鳴りを潜めさせた感じがあったんですよね。今このタイミングでそういうことをやってみたら、「あっ、これはやっぱ武器じゃん」と再認識できました。

――新鮮さがあるという点ですと、「今宵、又旅へ。」ですね。『オメでたカバー横丁〜一番街〜』を作った辺りから「オーガニックな空気感のある曲を作りたい」と赤飯さんは言っていましたが、これはまさにそれじゃないですか?

赤飯:はい。オーガニックなものに惹かれる感じがずっとあって、それを出していくのが大事だと思っていたのが前回のアルバムの時だったんです。でも、なかなかそれをメンバーのみんなと嚙み砕いて消化できなくて、悶々としていたんですよね。『オメでたカバー横丁〜一番街〜』の「君がいるだけで」ではやりたいことを形にできたので、あそこで蒔いた種が今回ようやく花開いたような感覚があります。

――「今宵、又旅へ。」は、どんな感じで作り始めたんですか?

赤飯:自分の中に一貫してあるやりたいことを素直に吐き出したのが、このメロディと歌詞です。コードに関しても「これがいい」というのが明確にありました。それを324に整えてもらって、さらに味付けをしていったんです。いままでいろいろやってきたからこそ、「こういうのが好きでしょ?」と324も納得しながらやってくれて、アイディアも出してくれたんだと思います。アレンジが上がってきた時に「そうそう! これめっちゃいいよね?」と2人ですごく納得しました。無理せずにこういうのを作れるようになった嬉しさがありましたね。

324:今までやってきたことが無駄にならなくて良かったなと思っています。「君がいるだけで」の時はakkinさんの力を借りて、赤飯のやりたいことを汲んだアレンジになったんです。前回のアルバムの時も「すばらしい時代」でakkinさんが手を貸してくださって、僕の中でも「なるほどね」と納得するものがあったんですよね。その経験があったからこそ、赤飯と一緒に曲を形にすることができたんだと思います。

赤飯:これをきっかけにまたいろいろできるんじゃない?

324:うん。そうだと思う。

ぽにきんぐだむ:なかなかこういうのを形にできなくて悶々としていたんですよね。あと、前回の全国ツアーも大きかった気がします。バラードとまでは行かないまでも、ちょっと一息つけるような曲も作りたいとメンバーのみんなも感じるようになっていたので、それもこの曲を作る上でのヒントになっていった気がします。

赤飯:そうだね。

ぽにきんぐだむ:「そういう空気感を出すんなら、こういうサウンドだよね?」みたいなイメージを我々も抱くことができたというか。ライブを重ねてきたからこそ、メンバー全員が同じ方向に進めたんだと思います。

――『オメでたカバー横丁〜一番街〜』をリリースした後、東京キネマ倶楽部で「君がいるだけで」をメインステージではなくてバルコニーでリラックスした感じで演奏していたじゃないですか。「今宵、又旅へ。」もああいういう感じになるのかなと想像しています。

赤飯:ああいうオーガニックでほっこりする感じが好きなので、それをどうしてもオメでたでやりたかったんですよね。あと、ぽにきも言っていた通り、ライブのセットリストの中でこういう曲があると、緩急がつくんです。ほっこりできるひと時があると、全体にメリハリが生まれますから。

――「今宵、又旅へ。」は、今回のアルバムの大きな成果では?

赤飯:本当にその通りです。

――アルバム制作のどの辺りの段階で完成したんですか?

ぽにきんぐだむ:最後の最後です。

赤飯:でも、時間はそんなにかからなかったです。とんとん拍子で完成に至りました。

ぽにきんぐだむ:こういう曲を今回も自分たちでの手で完成させられなかったら、またつらい宿題になったのかも。

324:今思えばそうだね。危機感を抱きながら作っていたわけではないけど。

ぽにきんぐだむ:「やらなきゃいけない」というような切迫した感じではなくて、「ライブでこういう曲があったらいいよね?」という部分で全員の意見が一致していたので、ストレスなく作れたんだと思います。

――アルバム全体を美しく締めくくる曲にもなっていますね。この後にアブノーマルな展開を遂げる「花魁ドリルスピン」がありますが、「今宵、又旅へ。」が本編のラストという印象です。「花魁ドリルスピン」は、カーテンコール的な曲なのかなと。

ぽにきんぐだむ:「花魁ドリルスピン」は、タイトルだけはデビューした頃からあったんです。

324:デビュー前じゃない? 結成時のメモに残っていたと思う。

ぽにきんぐだむ:6、7年前のアイディアがようやく形になったということですね。

赤飯:「これ、いい!」って当時のネタ帳から引っ張ってきて、「じゃあ、どういう曲にしていこう?」と考えながら歌詞のストーリーができていったんです。

――この曲の話、後回しにした方がいいのかも。今回のインタビュー、今のところ最近の状況がとてもよくわかる真面目な話が多いのに、この曲が流れを大きく変えてしまいそうな気が……。

ぽにきんぐだむ:なんか脱線しそう(笑)。

赤飯:ちゃんと綺麗にまとめられそうですよ。話していいですか?

――じゃあ、お願いします。

赤飯:その前に、この曲の話を散らかしてもらっていいですか?

ぽにきんぐだむ:散らかすってなに?(笑)。

――とりあえず話し始めると……「今宵、又旅へ。」の素敵な余韻を一気に覆すのが「花魁ドリルスピン」です。

赤飯:いえーい!

324:イントロの禍々しさがヤバくないですか?

――ヤバいですね。

324:まじでハードコアなイントロができて、1人でテンションが上がってました。僕らはハードなサウンドを鳴らすけど、結局やってることはそれをフリに使ったボケだったりするんですよね。だから今さら真面目にハードコアはできないんです。というか、真面目にやってるバンドに対してそれは失礼。だからフリに使わなきゃいけないんですけど、そういう使い方をする以上、生半可なサウンドにしてはいけないんです。

――ものすごい高低差のある展開を遂げますよね。

324:そうなんです。前半はヤバいハードコアサウンドで、後半はその全てを覆すキャッチーなサンバです。「花魁がスピンしてドリルになり、地球を掘り進んで行った結果、ブラジルに辿り着く」というアイディアが出て、「ブラジルに行くんだったらサンバになるってことじゃない?」と。そういう意味のわからない会議を経て、こういう曲になりました。

ぽにきんぐだむ:「掘り進んでブラジルに行くんだからサンバだよね?」「うん。その通りだ」と全員が納得するバンドは、オメでたくらいだと思います。

――バンドによっては、そんなことを真顔で言い始めたら即クビですよ。

ぽにきんぐだむ:そうかも(笑)。

――悪代官が「よいではないか。よいではないか」と言いながら帯を引っ張って、花魁が「あれえ~! お戯れを~!」とくるくる回る様が目に浮かびます。

324:そういう様子が最初から浮かんでいたのが、「花魁ドリルスピン」というタイトルでした。赤飯のアイディアだったかな?

赤飯:うん。この曲はバカな曲だと思われるんですけど、すごいメッセージソングなんですよ。「視野を広げて自由を手に入れる」ということなんです。つらいのに我慢してその場に居続ける必要はないんです。花魁もついつい職業上、帯を解かれてスピンしてしまうわけですが、実はそれは自分にとっての武器なのだと、ふと気づいたわけです。そしてドリルとなって地面を掘り進めた結果、辿り着いた新天地がブラジル。見たことがない風景が広がり、聴いたことがない陽気な音楽が鳴り響いているのを聴いて「楽しい! あれ? もう帰らなくていいんじゃない? ここでいいじゃん!」って気づくんです。ハッピーエンドを迎えるこの歌詞は、狭い視野で苦しんでいる人を解放したくて書いています。

324:はははは……。

赤飯:なんやねん その反応(笑)。思わぬ場所に自分の幸せがあるのだと気づいてもらえたらと思っています。

324:でも、意外とそういうメッセージはあるよね?

赤飯:うん。人生は流された結果そういうことになったりもするし、今あることが全てではないし、しんどかったら逃げてもいい。逃げた先で何かを見つけられるかもしれないんです。そういうことを歌っている優しい曲が、「花魁ドリルスピン」だと思っています。今までのオメでただったらブラジルに行ってからまた日本に戻っているんでしょうけど、戻っていないんですよ。なぜなら花魁に幸せなままでいて欲しいからです。

――楽しい龍宮城から帰らなかった浦島太郎のような感じ?

ぽにきんぐだむ:あるいは『トイ・ストリー4』のウッディですね。

赤飯:そうだね。

324:これは最近の制作の全体に関して気をつけていることなんですけど、ゴール設定をしっかりすることにしています。「この曲は何をするのか?」「この曲は何を大事にするのか?」というのを明確に決めて、制作の過程でいろんなアイディアが出てきて迷ったりした時、最初に決めた軸からブレていないかを確認するようになりました。そういうのも反映されているのが、この曲ですね。

――ラーメンの全部乗せみたいな過剰な感じになる傾向があるというのは、最近の取材で何度か話題に上っていましたよね。

324:そうなんです。曲がカロリー過多になる傾向があったので。例えば「鯛獲る」はめっちゃいい曲なんですけど、セクションが多くてカロリー過多だなとライブでやりながら感じていました。だから途中からサンバになる「花魁ドリルスピン」も、サンバのまま終わらせることにしたんです。

――様々な新曲が収録されたアルバムですが、ライブでかなり前から披露している曲もいくつかありますね。例えば「The OGAnizer -来訪神-」とか。

赤飯:この曲は秋田の男鹿で感じたこと、あの土地で脈々と受け継がれている文化に触発されて作りました。何とか形にしたいとずっと思っていて、3年くらいかけて完成しました。

――最初のきっかけは、『男鹿ナマハゲロックフェス』?

赤飯:そうです。2018年に前夜祭に出て、翌年から本祭に出させてもらうようになったんです。あのフェスのバックヤードでのバンドマン同士の物語、あのフェス自体が持っている物語に自分も当事者としていられることへの嬉しさがあって、そういう気持ちを曲にしたいと思っていました。「この土地に貢献することもしたい。なまはげの曲を作らなあかん」というのもありましたね。なまはげは単に子供を泣かす変わった風習だと思われがちなんですけど、あれは親子と地域の人々の絆を強固なものにしているんです。なまはげに対する誤解がこの曲がきっかけで解けて、いろいろ知ってもらえることにも繋がって欲しいです。

――来訪神とは、なまはげのことですよね?

赤飯:はい。なまはげは年に1回、大晦日に山から下りてくるんです。なまはげさんに連れて行かれそうになった子供が親に守ってもらうことで、親子の絆が深まるんですよね。泣かされた子供たちは、大人になってから今度はなまはげになるわけですけど、「あの時のなまはげは、こんな気持ちでやってたのかな?」とか考えながら一人前になった自分を感じるんです。そういうのも素敵だなと感じています。

――KSUKEさんは、どのような形で制作に携わったんですか?

赤飯:KSUKEは、サンプリングした音とかをトラックに落とし込んでアウトプットするのが得意なんです。男鹿の『なまはげ伝承館』(男鹿真山伝承館)で見学しながら録音したなまはげの音とかを、この曲で使ってもらいました。現地で収録した海や風の音も使いましたね。現地で感じたことをできる限り曲に詰め込みたかったので。

――音打屋-OTODAYA-の岩澤将志さんも、太鼓で参加しているんですよね?

赤飯:はい。現地で男鹿ナマハゲ太鼓を叩いている将志くんが秋田から来てくれて、レコーディングに参加してくれました。なまはげの声も彼です。

――これも「今宵、又旅へ。」と同じように、オーガニックな空気感が構築されている曲じゃないですか?

赤飯:おっしゃる通りです。かなりエレクトロに寄っているんですけど、男鹿で感じた自然の柔らかさ、清らかさも表現したくて、そのためにもこのサウンドは正しかったと思っています。

324:この曲に関しては、「できて良かった」とめっちゃ感じています。KSUKEくんに頼む前から「こういう曲をやりたい」と赤飯はずっと言っていて、デモ制作をしながら「なんか違うよね?」というのを繰り返していたんです。だから死屍累々なんですよ(笑)。今までに作ったデモがたくさんありますから。普段曲を書かないようなメンバーが赤飯と一緒に作ってみたものもありますし。

赤飯:フォローするわけじゃないけど、作ったデモは使えるパーツだと思う。曲自体はかっこいいと感じていたから。

ぽにきんぐだむ:うん。かっこいいセクションは、いろいろあると思う。

赤飯:じゃあ、あれを掘り起こしましょうか?

324:うん。1回、デモの整理をした方がいいのかもしれないね? 『オメでたい頭でなにより3』の時に作った中にも、結構良いものがあったと思うから。ああいうのを改めて形にするのもありだよね。

ぽにきんぐだむ:今のマインドだったら前とは違った観点で形にできるものもあるんだと思う。

324:当時は制作を進める中で「こんなんじゃ駄目だ」っていう焦りがめっちゃあって、それで上手くいかなかったんだと思うんだよね。今だったらもうちょっと楽しんで作れそう。

ぽにきんぐだむ:改めて向き合わないともったいないと思う。次回作はリサイクルする?

324:タイトルは『あぶれたやつ』?

赤飯:『ハードオメ』?

ぽにきんぐだむ:『おめこぼし』とか?

324:『おめこぼしEP』(笑)。

――(笑)。既にリリースされている曲に関しては、「チン♂アゲ⤴交渉中」も異彩を放っています。社会派バンドとしての一面を存分に示している曲ですから。

324:やっぱりそこは外せないところです。

――この曲を相変わらずエッチな内容として捉えている人がいるみたいですよ。

ぽにきんぐだむ:誠に遺憾としか言いようがないです。

――男気に溢れた「ソイヤ!好漢度BOY」も、聴きながら変な想像をしている人がいるようです。

ぽにきんぐだむ:夢を語っている曲なんですけどね。《漢度をアゲろ!》《神輿をアゲろ!》と鼓舞激励をしているんですから。

赤飯:《寄せてアゲろ》も、「みんなで身を寄せ合って上がっていこう」ということです。

ぽにきんぐだむ:ダイブを全面的に肯定するわけではないし、気をつけてもいただきたいんですけど、言葉でお客さんを煽る以外の角度で表現したくて作った曲なんです。「自然とダイブしたくなるような状況は、どうやったら生み出せるんだろう?」というところから始まり、「上げるのならば何を上げる?→神輿→感度→好漢度」という発想でした。

赤飯:我々はライブハウスでしか作れない光景をお客さんに体感して欲しいんです。でも、ライブハウスに対して「怖い」「参加しづらい」「初心者が行ったらはじかれる」というイメージがどうしてもあるので、「自分も参加できるじゃん」と背中を押せる曲を作りたかったんです。

――「wosushi〜ウォールオブ寿司〜」もそうでしたよね?

赤飯:はい。あれはウォールオブデスに参加することへのハードルを下げたくて作った曲ですから。ライブハウスで人の上を転がるのは慣れている人しかなかなかできないですけど、「ソイヤ!好漢度BOY」みたいな曲の後押しがあることで「自分にもできた! またやりたいな」「あの人にもできたから自分にもできそうだ」と体験できる人が増えたらいいなあと思っています。

――「チン♂アゲ⤴交渉中」もそういう門戸の広さがありますね。初めて聴いた人でも明るく踊れますし、「賃金が上がって欲しい」という庶民の願いも代弁していますから。

赤飯:そうなんです。それなのにすけべな意味で捉える人がいるとは、本当に腹立たしい! なんやねん!

ぽにきんぐだむ:出るとこ出ようかな。

――出すとこ出しながら?

ぽにきんぐだむ:何を出すんですか?

――まあとにかく……アルバムのリリースをきっかけに、これらの曲に対する誤解が解けることを心から願っています。

ぽにきんぐだむ:ありがとうございます。「チン♂アゲ⤴交渉中」は、ライブでも楽しいんですよね。

赤飯:「曲を知らないから盛り上がってる輪に加われない」というのを取っ払えたのは大きかったと思う。

――「チン♂アゲ⤴交渉中」は、赤飯さんの変幻自在な声のすごさがわかりやすく伝わる曲でもあります。シャウト、スクリーム、女性ボイスとかを1人で放っている曲ですから。ファンにはお馴染みのことですけど、幅広い人に向けたメディアの取材とかではその点を積極的にアピールした方がいいですよ。

赤飯:「女性のゲストが参加しているんですか?」とか言われますからね。

――「推しのこメモリアル」は、最初から最後まで女性ボイスで歌っていますが、こういうのは珍しいんじゃないですか?

赤飯:めちゃくちゃ珍しいです。歌い手時代にSKE48の「青空片想い」カバーをしたんですけど、それ以来なのかな? 『オメでたカバー横丁〜一番街〜』でモーニング娘。の「恋愛レボリューション21」をカバーしたけど、あれはそういう感じじゃなかったし。今回の「推しのこメモリアル」は、日本の女性アイドル、日本のJ-POPがテーマで、それを真面目にやりながら自分たちの手でぶっ壊しています。

――ヲタのコールが大き過ぎてアイドルの歌声がかき消されるという、実際の現場で度々起こっている現象を表現していますよね?

赤飯:そうなんです。アウトロで結構本気のMCをしているんですけど、多分、聴こえていないですよね?

――聴こえないです。アイドルの現場で隣のお客さんが騒がしいと起こる現象ですよね?

赤飯:そうです。隣の客ガチャが悪いとそうなるんです。

――この曲に盛り込まれているヲタのコールは、なかなかひどいです。(ダダ滑り からの 大外刈り)(大外刈りから スポーツ刈り スポーツ刈り刈りガリクソン)とか。

ぽにきんぐだむ:本当にノリだけです(笑)。

赤飯:これは手練れのお客さんに、ぜひ覚えてもらいたいですね。

ぽにきんぐだむ:ライブでぜひ大声で歌って欲しいです。「赤飯vsお客さん」という感じにしたいですから。

赤飯:わしが戦意喪失したら勝ちです。

――324さんも、全力でアイドルソングを作り上げたんですね?

324:はい。ガチでちゃんとアイドルソングを作りました。「今のストレートなアイドルソングはどういうのだろう?」と考えながら作って、最終的にそれをぶち壊しています。これ、間奏のギターソロとかめちゃくちゃかっこいいんですよ。

ぽにきんぐだむ:めっちゃいいよ。

324:そうだよね? でも全然聴こえないから(笑)。

ぽにきんぐだむ:トラックが真面目であればあるほどぶち壊すのが活きてくる曲でした。

――アイドルソング風のメモリアルシリーズ第3弾ですね。

ぽにきんぐだむ:今までの3曲、実は筋が通っているんです。「推しごとメモリアル」は、アイドルの曲。「推しどこメモリアル」は、卒業した後の歌。今回の「推しのこメモリアル」は、今までの2曲の前の時期。つまりエピソード0なんです。『スター・ウォーズ』形式で作っています。

――このシリーズをライブで披露する際は、メンバー全員が何かしらのパフォーマンスをするのがお約束になっていますが、「推しのこメモリアル」はどうなるんですか?

ぽにきんぐだむ:全員がマイクでガヤをして、とにかく赤飯の歌をかき消すのではないかと(笑)。今のところそういうイメージです。赤飯がピンのアイドルとして歌っている現場の感じにしたいですね。

赤飯:ちゃんと振り付けをしてもらった方がいいのかも。わしがガチのアイドルになった方が壊しがいがあると思うので、これからレッスンに行こうと思います!

――ミニスカートは穿くんですか?

赤飯:なんでやねん!

324:でもアイドルだし、ミニスカートは穿いた方がいいんじゃない?

赤飯:いやあ……あのう……ね? ………………脱毛行ってきますわ(笑)。

――(笑)。今回のアルバムの全曲について語っていただきましたが、何か改めて感じていることはありますか?

ぽにきんぐだむ:全部の曲に役割があるんですよね。コロナが明けてから新しいライブハウスの形を作っていくにあたり、今までの曲にはない役割を担える新しい曲たちを作って戦いたいと思っていたんです。それがまさに形にできました。

――収録されている11曲の役割は、それぞれどのようなイメージですか?

ぽにきんぐだむ:1曲目の「鼓舞激励」で合唱をして、「着火繚乱ビンビンビン」でタオルを回して、「地下室の王」は新しいタイプの演出があり、「チン♂アゲ⤴交渉中」は踊って、「ソイヤ!好漢度BOY」は飛んで、「推しのこメモリアル」はアイドルをやって、「Move your Heart」 はしゃがんでからジャンプ。「ADVANCE TiME」はアニソンっぽくて、「The OGAnizer -来訪神」はEDM、「今宵、又旅へ。」で休憩してもらって、「花魁ドリルスピン」でぶち壊す……っていう感じでしょうか? 1つ1つにそういう明確な役割があるんです。

赤飯:最初から全体像の地図を作っていたわけではなく、結果的にそうなったんですよね。良い傾向だと思います。背伸びをせず、何にも縛られずにやりながら自ずとこうなったことに美しさを感じています。

324:迷いなく制作できたのも、すごく気持ちよかったアルバムです。自己表現をしつつバンドとして面白いこともできて、全体的に良いバランスにもなりました。今後、こういうのを軸にふざけていけたらいいのかなあという感じですね。


文:田中大


4th ALBUM
「オメでたい頭でなにより4」
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