NEWS 2023.01.17
~今 いくね くるね 3~2023.1.8 EX THEATER ROPPONGIライブレポート
1月8日の東京EX THEATER ROPPONGI公演でファイナルを迎えた『オメでたい頭でなにより 全国ワンマンツアー 〜今 いくね くるね 3〜』。本編がスタートする前には、“オメコンボ・チケット”購入者への特典である「オメコンボ3マン」が行われた。最初に登場したのは、324、maoによる「M&Mズ(ex病み上がり決死隊)」。声出し不可のスペース“デリケートゾーン”を設置しつつも、マスク着用の状態での声出しが可能である旨を漫才風の絶妙な掛け合いで説明し、オメっ子(オメでたファンの呼称)を沸かせていた。
2番目にステージに現れたのは、赤飯、ぽにきんぐだむ、ミト充によるユニット「放課後ととのい倶楽部」。昨年末にサウナの気持ちよさに目覚めたのだという324がさり気なく紛れ込むボケを経て披露されたのは、オリジナル曲「放課後ととのい倶楽部」。赤飯、ぽにきんぐだむはアコースティックギター、ミト充はジャンベ――という編成の穏やかサウンドが心地よかった。「次のアルバムのボーナストラックに入れましょう」とぽにきんぐだむが言っていたので、もしかしたら実現するかもしれない。そして、「オメコンボ3マン」のトリを飾ったのは、オメでたのコピーバンドとして活動していた時期を経て、2021年9月29日にメジャーデビューしたミステリアスな5人組バンド「お目出たズ」。全員目玉が飛び出ているものの、どことなくオメでたのメンバーに容姿が似ているように感じるのは、やはり気のせいなのだろう……。彼らのメジャーデビュー曲「メジャーデビュー曲」が披露された後は、今回のツアーの各地でも演奏していた新曲のタイトルが発表された。オメっ子たちから寄せられた様々なタイトル案から選ばれたのは、「すばらしい自治体」。尊敬しているオメでたの曲を彷彿とさせるタイトルとなったこの曲を、彼らは全力で届けてくれた。
「オメコンボ3マン」を経て、いよいよオメでたのライブ。赤飯がパーソナリティを務めるラジオ番組風のBGM『オールナイト転換』を楽しんだ直後に客電が暗転。324(Gt)、mao(Ba)、ミト充(Dr)によるアドリブセッションが始まると赤飯(Vo)、ぽにきんぐだむ(Gt&Vo)も登場。「ファイナル公演にようこそ! 声出せるから、お前らが持ってるもの全部こっちにぶつけたってくれよ!」と赤飯がフロアに向かって呼びかけて、「きなしゃんせ。」がスタートした。オメっ子たちの手拍子が加わり、みるみる内に熱を帯び始めたサウンドが痛快で仕方ない。続いて、「SHOW-GUTS」によって巻き起こった二礼二拍手一礼の波動が会場内を震わせ、「乾杯トゥモロー」ではオメっ子たちが掲げた無数の掌がビールジョッキのように瑞々しく輝き、「海老振り屋」ではフロアで回転したタオルの数々が活きの良い海老のような動きを見せ、「スーパー銭湯~オメの湯~」では絶妙なタイミングで打ち鳴らされる手拍子が盛り上がりを加速し……怒涛の勢いで披露された序盤の曲たちは、オメでたの5人の熱いエネルギーをまざまざと体感させてくれた。
「3年前、ツアーファイナルをEX THEATERで予定してましたが、流行り病によって延期となりまして。その延期公演も中止になりました。ようやくやれます。新しいライブハウスのあり方をみんなと一緒に作っていきたいと思います」と語ったぽにきんぐだむ。ステージに置かれた4つのお立ち台にELECOM、白鶴酒造、ポニーキャニオン、セブン&アイ・ネットメディアの広告が入ったことを、メンバーたちはとても喜んでいた。セブン&アイ・ネットメディアに関しては、なんと取締役がオメでたのファン。このライブも観に来ていた。そんな明るいムードのMCタイムを経て、再開された演奏。“ギターソロに入る直前に324が床をドン!と鳴らすと赤飯が跳ねる”というお約束がツアー中に生まれたのだという「四畳半フォークリフト」。フロアでヘドバンの嵐が起こった「超クソデカマックスビッグ主語」。「この歌を歌えるのを3年間待ってた!」という言葉をぽにきんぐだむが添えつつ、ライブができる喜びを全力で体現していた「NO MUSIC NO LIFE」……ロックバンドとしての圧倒的なかっこよさを示すサウンドが鳴り響き続けていた。温かいエネルギーでオメっ子たちを包んだ「意味ない歌」と「プレシューズ」を経て披露された「推しごとメモリアル」は、“歴史的瞬間を迎えた”と言っても過言ではないだろう。サビでメンバー全員がアイドル風の振り付けを踊るこの曲はギターソロを実際には弾かず、各地のご当地グルメを324が食べさせられるのが今回のツアーの恒例となっていた。しかし、ついに324の華麗なギターソロが炸裂。オメっ子たちは大喝采を送っていた。
熱い爆音が冴えわたった「日出ズル場所」を経て突入した「HAKUNA MATATA」。作曲が中西航介、ぽにきんぐだむ、アレンジをコロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のDANGER×DEERとしてお馴染みのDJ・KSUKEが手掛けたこの曲は、EDMとバンドサウンドの融合が新境地を示していた。今後のライブでも存在感を発揮するだろう。すっかりトランス状態となったオメっ子たちは、その後に届けられた「生霊の盆踊り」でも踊りまくっていた。そして、“演奏がストップしたら観客は動きを止めなければいけない”というダルマさんが転んだ風の遊びを盛り込んだ「ダルマさんは転ばないっ」も披露されて、ライブはいよいよ佳境へ。
「We Will Luck You」が届けられた後、赤飯は想いをじっくりと語った。「どんな気持ちでこのツアーを回ればいいのかな?って思ってたんですよ。でも、蓋を開けてみれば少しずつではあるけど、状況が緩和されて、やれることが少しずつ増えてきて。ツアーが始まるまで、自分が苦しんでたことに気づかなかった。初日の松阪で少しずつ前進できてることを目の当たりにして、文字通り膝から崩れ落ちて、泣き崩れてしまって……。“こんなにくらってたんや?”って気づきました。その時に出た言葉が“さみしかったよお”。きみらと同じ視点で一緒に騒ぐことに飢えてたことに気づいたんですよね。きみらから力を貰ってるってライブの度に思わされてます。改めて初心に還るじゃないですけど、あほな夢見てもいいかな?って。俺らはそもそも、フロアでみんなとバカやるのが大好きで、そのためにバンド組んで音楽作って活動しているんです。“こんな面白いもんがあるんだ?”って1人でも多くの人に知ってもらいたい。そう思って活動してる。オメでたでしか作れないバカな光景をどんどん広げていくことに喜びを感じてたんですよ。このツアーでそういう夢をまた見ていいのかもなと思わされました。このバカな光景を1万人規模まで持って行ったら、バカで笑えるなと思いました。バカなこと言います。武道館に行きたい! バンドマンはバカな生き物だよ。とりあえず武道館行きたいって言うもん。ええやん? 俺らと一緒にもう1回夢見たってください。反撃の狼煙をここでもう一度上げます!」――この言葉を噛み締めながら聴いた「ザ・レジスタンス」は、胸に深く沁みた。オメでたとオメっ子たちが一丸となり、未来を諦めない決意を全力で示しているのを感じた。
轟音がモヤモヤした想いを徹底的に粉砕してくれた「あれこれそれどれ」。Wピースが揺れるフロアの風景が美しく、オメっ子たちの大合唱が心地よかった「オメでたい頭でなにより」。そしてラストを飾った「すばらしい時代」は、印象的だった1曲として思い出される。音源で聴いた時は敗北感やホロ苦さが際立っている曲として受け止めていたのだが、不思議と晴れやかで明るいものを感じた。全18公演が行われた今回のツアーの中でオメでたが観客から受け取ったエネルギーが、この曲に新しい色彩を加えたのかもしれない。
全曲が披露された後は記念撮影。メジャーデビューから5周年を迎える4月4日に新宿ロフトで『大寿祭』が開催される旨も発表された。そして、ステージからの去り際にメンバー各々が届けてくれたメッセージが素敵だったので、最後に紹介しておきたい。
「新しいライブハウスのあり方をもう一度ゼロから作っていこうと思います。昔に戻りたい、戻したいという想いはありますけど、過去ばっかり見るんじゃなくて、みんなと新しいライブハウスをこれから作っていきたいと思います。『大寿祭』を最高のイベントに育てたいと思います。もう1回俺たちが始まった場所、ライブハウスからやり直します。1からっていうかゼロからですよ」(ぽにきんぐだむ)
「ライブハウスっていう場所が大好きだと再認識させてもらいました。ライブ中に思い出したことがあって。大好きなバンドマンの先輩が、横浜アリーナかどこかでライブをした時に“お前らがいればどこでもライブハウスになるんだな”って言ったんです。その言葉に俺、すっげえ涙して。今回、どの公演でもそれを感じさせてもらいました。本当にありがとうございました。ちょっと私情が入るんだけど……20年くらいバンドマンをやってて。お客さんが数人しかいなかった頃にお世話になってたライブハウスの店長さんが今日来てくれてます。これだけ自慢できるみんなが俺にはできました。今日、来てくれてありがとうございました! 自慢できるメンバーと、自慢できるスタッフと、自慢できるフロアのみんなにありがとうを伝えて、お別れしたいと思います」(ミト充)
「楽しみにして来てくれて、健康でいてくれて、支えてくれてありがとうございます。「きなしゃんせ。」の歌詞にもあるけど“もう畳もうかな”って思った時も正直なところありました。でも恐る恐る声出しが始まって、そこから1つずつフロアを作っていって。それがものすごく楽しくて。“ここにいられてよかったなあ”って思いました。オメでたのフロアはマナーもモラルも守られていて素晴らしい。この光景をどんな手段を使っても広めようと思ってます。みんな、応援してください。4月4日の『大寿祭』、待ってます!」(mao)
「今までで一番長いツアーだったんですけど、1本1本、とても思うところがあって。最高のフロアになって楽しかったです。それもこれもみなさんが清く正しく法律を守り、信号を守り、うがい手洗いをして、お年寄りには席を譲って、満員電車で入口付近にいたら1回降りて、荷物をちゃんと前に持って……そういう人たちだから取り戻せた景色がこれだから。一歩一歩前に進めてるから。お前たちがかっこいいからだよ! 1つだけ言わせてください。あんたたち、よかったよ!(※ガリットチュウ福島善成による木の実ナナのモノマネ風)」(324)
「来てくれてありがとう! ライブって来てもろてなんぼなんよ。生きててよかった。脆弱な人間ですから、これだけのみんなに支えてもらってるって、目で見ないとなかなか納得できない。2023年は『大寿祭』もございますし、いろんな対バンも決まってます。ゼロから作ってく、ゼロからやり直してくって言ってたでしょ? 本当にその通りで。それくらいの覚悟で俺らはやっていくから、ライブハウスに遊びに来てください。これからもめちゃめちゃあほみたいなフロアをお前らと一緒に作りたいと思ってるからよお! 俺は“フロアのプリンセスになりたい”ってずっと言ってきました。サークルを作ってみんなが俺に肘鉄を入れにくるっていうのがあるわけですよ(笑)。よくわかんないでしょ? そんなことをやってたんです。その肘鉄を入れにくるやつらから俺を守ってくれるフロアのナイトみたいな人がいるんですよ。そういうプリンセスになりたいと俺は思ってます。だから引き続き肘鉄を入れに来てください(笑)。っていうわけで、今年もよろしく! あんたたち、よかったよ!(※ガリットチュウ福島善成による木の実ナナのモノマネ風)」(赤飯)
こうして終演を迎えた『オメでたい頭でなにより 全国ワンマンツアー 〜今 いくね くるね 3〜』ファイナル公演。2023年のオメでたの活動への期待を徹底的に高めてくれたライブだった。
文:田中大
写真:ゆうと。
オメでたい頭でなにより
全国ワンマンツアー 〜今 いくね くるね3〜
2023年1月8日(日) EX THEATER ROPPONGI
01:きなしゃんせ。
02:SHOW-GUTS
03:乾杯トゥモロー
04:海老振り屋
05:スーパー銭湯~オメの湯~
06:四畳半フォークリフト
07:超クソデカマックスビッグ主語
08:NO MUSIC NO LIFE
09:意味ない歌
10:プレシューズ
11:推しごとメモリアル
12:日出ズル場所
13:HAKUNA MATATA
14:生霊の盆踊り
15:ダルマさんは転ばないっ
16:We Will Luck You
17:ザ・レジスタンス
18:あれこれそれどれ
19:オメでたい頭でなにより
20:すばらしい時代