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NEWS 2022.03.31

「オメでたカバー横丁〜一番街〜」オフィシャルインタビュー(其の二)

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「オメでたカバー横丁〜一番街〜」オフィシャルインタビュー(其の二)

文:田中大


■「恋愛レボリューション21」(モーニング娘。/2000年)

――「恋愛レボリューション21」は、200012月のリリースですから、もうすぐ21世紀を迎える時期でしたね。

赤飯:これはもう僕の青春でしかない曲です。

――高校生の時?

赤飯:そう。一番の青春。超青春。モー娘。が出る番組を全部録画して、振りを全部覚えるために「Mステだと脚のムーブが見えへん。うたばんで補完だ!」とかやってました。

――振りも完コピしていたんですね?

赤飯:はい。練習してる俺をおかんが扉の隙間からこっそり覗いていて、1回転する振りで回転した瞬間に目が合うっていう(笑)。すたっ!と着地して、「閉めてもらっていい?」って言いました。

――いい話。

赤飯:それはプッチモニの振りコピをしてた時ですね。あと、モー娘。の「I WISH」の振りコピをしてる時も同じことがありました。

――単に曲を聴くとかテレビで観るとかだけじゃない情熱があったんですね。

赤飯:はい。なんなら「なりたい」なんですよ。モー娘。になりたかったんです。

――僕が「涼宮ハルヒになりたい」って常々言っているあの感じ?

赤飯:それ! くっそキモい!(笑)。お互いに目くそ鼻くその気持ち悪さですね。まあとにかくモー娘。になりたくて、しかも最終的には「メンバーになりたい」っていうのを通り越して「モーニング娘。という概念になりたい」って言いだしてました。自分でも何言ってるかわからんけど、そんなことを言ってました。本当にオーディションを受けようと思ってましたけど、性別の壁に阻まれたというのもありまして。

――並々ならぬ想いがあるモーニング娘。のこの曲をカバーするにあたって、どのようなことを考えていました?

赤飯:ただ元気にカバーしてもしゃあないし、年齢も年齢なので大人っぽい部分も絶対に表現したいと思ってて。そういうところをakkinさんにお伝えしたら、しっとりとしたAメロ、大人っぽい雰囲気のイントロとかを送ってくださったんです。ちゃんとヘヴィになるところもあり、でもサビでひらける感じになったり。イメージ通りのものを提供していただけました。最初はサビの部分も結構塩っ辛く突き抜けてやろうかなと思ってたんですけど、ポリープの影響もあり、「あんまり歪んだ声では歌えねえなあ」って。だから、もともとは絶対にやめておこうと思ってた「原曲に寄せてみるか?」っていうのをやってみたら、案外それが良かったんです。

――歌の部分の構築も、すごく緻密なカバーですね。

赤飯:昔やったらモー娘。の各メンバーの声をめっちゃコピーしてやってたと思うんですけど、「なんかそれは違う」っていうのもありました。キャラの使い分けだけはしっかりとやって、4パターンくらいの声をダブリングでやって、16種類くらいの声素材を全体に散りばめてる感じです。だからトラック数がえげつないことになって、途中でパソコンの動作が遅くなりました(笑)。エンジニアさんにも「これは……」って言われましたから。

――青春時代のどうかしてる衝動の再来ですね。

赤飯:はい。再び花開きました(笑)。だから喜びと苦しみが同時に襲ってきた曲ですね。

――原曲のものすごさも、改めて感じたんじゃないですか?

赤飯:そうでしたね。原曲のハモのラインが重なり過ぎてて、「わからん!」ってなって何度もMVを観たり。この曲、アレンジがえぐいですよ。

――原曲は、ダンス☆マンさんの編曲でしたね。

赤飯:そう! めちゃくちゃ面白いことをやってて。

――モー娘。の他の曲も、サウンド面が猛烈に凝っていますからね。「日本人のノリを変えたのがモー娘。である」みたいなことがよく言われますけど、「恋愛レボリューション21」のディスコサウンドも、そうだったと思います。

赤飯:あの時期はRBも流行ってましたけど、そういう要素をポップミュージックに落とし込んだのが、こういう曲だったのかもしれないですね。「カバーすることになって、バンドサウンドを聴きながらサビを入れてる」っていう状況をふと俯瞰で見た時に、むしょうに泣けてきたんですよ。「俺は今、あの時の気持ちも抱えながら歌を録ってる! うぅわあああ!」ってなったので、1回ビスマルクになりました。

――若い読者のみなさんのために「ビスマルクになる」を念のために翻訳しておくと……「かがんで、眉間を指で押さえる」という意味です。

赤飯:「くるなあ、これ……」って、感慨深いものがありましたね。落ちサビの歌詞が《この星は 美しい 2人出会った地球》なんですよ。ここが「俺とモーニング娘。が出会ったこの世界は素晴らしい!」ってなっちゃって(笑)。それで余計泣けてきました。ラスサビに向かうにつれて「作業がいよいよ最後の辺りに向かってきてる」っていうのもあって、オチサビの時にぐっときてしまいましたねえ。

――「恋愛レボリューション21」の頃のモーニング娘。は、本当にものすごいエネルギーを放っていましたよね。当時の日本の社会現象だったと言っても過言ではないくらいでしたから。

赤飯:「この時期が黄金期やったよね?」とか言いたくないですけど、自分が一番どっぷりハマってた時期です。もう、何に関してもモーニング娘。が先に来る感じになってた時期ですから。

――ラウドロックにもハマっていた時期ですよね?

赤飯:はい。スリップノットを高校の頃から聴いていたので、モーニング娘。と並行してました。

――このカバーに関して、さらに語っておきたいことはあります?

赤飯:Aメロで大人感を出すために、わざとピッチ低めに歌ってます。あと、間奏の楽器のソロみたいなところは、僕の踊りに合わせて弾いてもらってますね。

――ライブでも踊ることになりますか?

赤飯:はい。それを想定してるから「お前ら、俺の踊りが良くなるように合わせて弾いてみてくれ」と(笑)。レコーディングの時に実際に振りを何度も踊りながら、「ここで腕をブーン!って振るから、ベースのスライドだな」とか。そういう作り方をしました。この曲が、つんくさんに届いたら嬉しいなあ。シャ乱Qのトリビュート盤の企画とかいつかあったら、絶対に参加したい。参加できなかったら、もう音楽やめます(笑)。

――(笑)「いいわけ」のオマージュの「湯沸け」の時も、ちゃんと許諾を録ったオメでたですからね。接点は既にあるじゃないですか。

赤飯:接点が雑(笑)。


■「明日があるさ」(坂本九/1963年)

――「明日があるさ」は、吉本興業の芸人さんたちのユニットRe:Japanによるカバーも有名ですね。ウルフルズのカバーは、2001年のジョージアのCMソングでした。

赤飯:「この曲は絶対にやろう」って、わりと最初からみんなと話してました。「ウチらがもともと持ってるものに近しい」という勝手なシンパシーのようなものを感じる曲なので。「オメでたい頭でなにより」とか、あっち系の曲として捉えてます。

――このカバーは、オールディーズ、ロカビリーっぽいアレンジですね。

赤飯:はい。ロカビリーっぽい曲はオメでたの初期にもあったんですけど、それとはまた違った感じです。人肌のぬくもりを感じられるというか、さっきも言ったオーガニック感みたいなものを大事にしたいと324に伝えてました。だから「プレイヤーの顔がしっかり見えるものにする」というのを軸にしてます。僕が後ろでハーモニカを吹いてたりもしますし。

――カズーも吹いていますよね?

赤飯:カズーも使いました。カズーはゆずの影響で、昔使ってたのを今回吹いてます。懐かしさ、郷愁感みたいなものを大事にしたんですよね。歌詞の物語を想像して、主人公を自分に降ろすイメージで歌いました。細かいニュアンスもかなり意識して歌ってます。

――昭和の雰囲気を今回のカバーの中で一番感じる仕上がりです。聴いているとレトロな雰囲気の喫茶店とかが思い浮かびますから。

赤飯:まさにそういう感じにしたかったんです。そういうのを今風のエッセンスと共に形にしたかったんですよね。古民家をリノベーションするような感覚でやれたのかなと。

――『大改造!!劇的ビフォーアフター』の匠のような?

赤飯:はい。匠の技です(笑)。

――最後にみんなで大合唱して、拍手で終わる穏やかな雰囲気も良いですね。

赤飯:そこもすごく気に入ってます。大団円感のあるああいう演出が大好きなんですよ。

――今の状況が落ち着いたら、お客さんと一緒に歌いたい曲じゃないですか?

赤飯:そうですね。なんなら、わしが歌わなくてもいいのかも。「マイク要らんぞー!」くらいの感じでやりたいですね。そういえばこの曲、坂本九さんは《ベルがなるよ ベルがなるよ》のところで、「ぷるるるるる~」ってやってるんですよ。それはそのまま拝借しました。坂本九さんの歌い方を研究するためにいろいろ聴いたんですけど、もともとロカビリーやロックンロールを歌っていらっしゃったんですね。エルヴィス・プレスリーの日本語カバーもあって、「監獄ロック」の日本語カバー「特急列車かけおち号」とかも聴きました。この曲はサブスクで聴けますので、みなさんもぜひ。


■「君がいるだけで」(米米CLUB/1992年)

――「君がいるだけで」は、安田成美さんと中森明菜さんが出演したドラマ『素顔のままで』の主題歌でした。

赤飯:そうでしたね。観てましたよ。このカバーは冒険しました。完全アコースティックですから。最初はPerfumeっぽいイメージというか、デジタルなサウンドでやるアイディアも出てたんですけど、「俺の思う通りにやらせてくれ」と言ってメンバーを説き伏せました。とにかくオーガニックな感じを大事にしたくて。「オーガニックに全振りしたらどうなるのか?」を試したかったんですよね。

――アコーディオンも、オーガニック感を出していますね。

赤飯:アコーディオンは、akkinさんがアレンジで入れてくださったんです。カントリーの優しくてほのぼのする感じをとことん追求して、アンビエントの代わりに環境音を入れてます。

――虫の声や川のせせらぎの音ですね。

赤飯:はい。牧場でロッキングチェアにでも揺られながら軽くやってるような雰囲気を演出したくて。わし、今回のアルバムを通して「空間演出が大好きなんや」と気づいちゃったんですよ。ただ「曲をやりました」ではなくて、「空間演出」として曲を表現したくて。「こういう空間なんですよ」っていうのをやるためにいろいろ試行錯誤したのは、今回の制作の大きな収穫でした。そういうアプローチで一番全振りしたのが、「君がいるだけで」です。

――赤飯さんは自宅のトイレを昭和っぽくしたりとか、もともと空間演出的なことが好きですよね。そういうのが音楽面で意識的に発揮されるようになったということ?

赤飯:そういうことやと思います。「空間を作りたかったんや、俺は」ってやっと気づけました。だからこの曲は今までに歌ったどの曲よりも抑えて歌ってます。ほぼウィスパーで、マイクから離れて歌ったりもしましたから。マイクを近づけて歌うと、何かが違う感じがしたので。そういう実験をいろいろしてみて、ぶっちゃけまだ100%は満足できてないんですけど、ファーストステップとして今後に繋がりそうです。このアレンジはすごくしっくりくるし、今やりたいことで間違いない。ここでやってることを今後のオリジナル曲に活かしていきたいです。

――その他に、アレンジに関するこだわりはありますか?

赤飯:原曲は「タッタータ」っていうホーンが印象的じゃないですか? でも、このカバーはカントリー調なので、それを再現するとどうもしっくりこなかったんです。だから一旦は入れないことにしたんですけど、「やっぱり入れたい」って試しに声でやってみました。それがハマったので、メンバーにやってもらいました。

――米米CLUBはバンドだから当然音楽を真剣に追求しつつも、演劇的な要素があったり、ダンスパフォーマンスとかも含めたエンタテインメントを当時から提示していましたよね。キャッチーですけど、尖ったものも感じるバンドです。

赤飯:オメでたも、そういうものを形にしたいんですよね。そういう点でもシンパシーを勝手に感じてるバンド。もしファンクラブを作るんやったら「オメオメCLUB」にしたいと決めてますから(笑)。



――カバーした9曲についてじっくり語っていただきました。僕が全体を通して思ったのは「希望を感じさせてくれる曲たちである」ということなんですけど、どう思います?

赤飯:結果そうなったっていう感じですね。意識的にそういう曲を選ぶというのは、そもそもなくて。出来上がってみたらそうなってたという感じです。今、言われるまで全く気づきませんでした。

――「幸せに向かってそっと後押しする」というようなこの感じ、オメでたの根底にあるものだと僕は思っています。それを象徴するライブのMCを引用していいですか? 20192月の千葉LOOK公演のレポートを書いた時、僕がメモしたものなんですけど。

赤飯:どうぞ。全然覚えてないですけど、何て言ったんですか?

――「この世は立ち止まってるといろんな不幸が降り注いでくるから、自分で決めて自分でどうするか考えて前に進まないと幸せはやってこないから。幸せの尺度は個人差があるから、俺らが君たちを確実に幸せにするのは不可能だと思う。ただ、俺たちがここで君たちとできること、それは“幸せになろう”という意志を持つきっかけ。このライブがきっかけになればいいなと思って俺はやってる」というMCが、あのライブの途中でありました。

赤飯:俺、それをライブで聞いたら泣きますわ(笑)。そんなええこと言ってたんや? でも、「幸せになる意志を持ってもがかないとだめ」っていうのは、よく言ってましたね。

――「幸せになろう」という意志を持つきっかけをそっと届けるこの感じ、オメでたの基本姿勢だと思いますし、今回のカバーアルバムもそういう部分が表れている作品ですよ。

赤飯:なるほどね。しかし、そんなええこと言ってたんや? 最近、ライブでええこと言おうとしなくなってるタームやもんで、逆に心に響きました。

――あと、タイトルが『オメでたカバー横丁〜一番街〜』なのも気になっているんですよ。「二番街」とかに繋がりそうな感じがあるので。

赤飯:「こういうタイトルにしておけばシリーズ化しやすいやろな」と(笑)。

――まあ、それはみなさんの反応次第ですね。好評であればシリーズ化もあり得ると?

赤飯:そうですね。カバー横丁の道が少しずつ増えていって、二番街、三番街とかができていくかもしれないですよ。

――5月には東京と大阪でカバー曲しかやらないライブを開催するんですね?

赤飯:はい。『オメでたカバー劇場』というタイトルです。今回のカバーアルバムのリリースを受けてのライブですね。

――カバーは、今後も時々やりますよね?

赤飯:はい。やりたいです。ストックが貯まったら、またこういう形でまとめて配信するかもしれないですし。まあ、今回はアウトプットができなくなってた中でアルバムとして作ったわけですけど、制作を通して前向きな気持ちになりました。モチベーションも上がって、今後オリジナルを作る際の「こういう風にやればいいんだ」っていうのも見えて、ほんまの意味でバンドとして成長できたと思います。いろんな名曲に向き合って、すごく勉強にもなりました。



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